aversion 2 (ページ19)

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樹「で、どう？」
　「悪いけど、無理だね」
樹「えー」

　でっかい声で残念そうな声を上げる田中くん。でも、予想はついてただろうな。私がすぐに「いいよ」なんて言う訳ないし。

樹「きょもは軽音部だし、北斗も文芸部だし、ジェシーは俺と交代でバスケ部の屋台やってるし、高地もサッカー部あるでしょ？慎太郎だって部活のやつだし…花ちゃんは部活の友だちと回ってるんでしょ？」
　「…詳しいな」
樹「聞いて回ったからね。Aちゃんを誘うために。で、そんな状況でこの後どうするつもりだったの？」
　「別に、一人で……あ、違う、ほら、あの子。今戻ってきたあの子と一緒に行こうとしてたの。ね！！」

　花のことまでも知ってるとなるとどう回避しようか。素直に「一人で行きたいとこだけ行くつもりだった」なんて言ったら絶対に「なら一緒に」なんて追い打ちかけられる。どう断るのが正解か、なんて悩んでたら丁度良くトイレに行ってた一緒に監視してた友達が戻ってくる。

　さっき私の苦労を聞いてくれていたし、嘘でも話合わせてくれるかもしれない。と、願いを込めて強めに同意を促した。

樹「えー…そうだったの？」
　「…いや、違いますよ？ちょっとA、適当言わないでよ！」
　「え！？」

　頷いてくれそうだったところに田中くんが声を発すれば、手のひらを返したように否定する。田中くんに見えないような角度で「ごめん」みたいなポーズをする。

樹「なんだ。それなら当番終わったらAちゃん、借りてもいい？」
　「どうぞどうぞ。何なら人来ないし、今からでも！」
　「は！？ちょっと！？何言って…！」
樹「え！？マジ！？ほんとに！？」
　「どうぞどうぞ」

　こいつこそ、何を勝手に言ってるんだ！？

　困惑していれば勢いよく田中くんが立ち上がって私の腕をつかむ。

樹「なら、借りるわ！今度お礼する！」
　「そんなの別に…楽しんでー！」
　「勝手に話し進めないでよ！」

　ルンルン、という音が似合いそうな足取りで進む田中くんに引きずられるように歩き出してしまう。振り返ってみた友達は申し訳なさそうな顔をして次はしっかりと手を合わせて謝るポーズを見せていた。

　あとから携帯に入ってきた連絡には「田中くんの圧に勝てなかった」なんてあった。…まぁ、圧倒的陽キャで見た目いかつくて、なんて人にあんな感じで言われたら負けるのも分からなくないけど。…人を売るのはどうかと思う。