aversion 2 (ページ2)

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　「余計なことばっかり…」
樹「俺にとっては嬉しいことばっかりだけどね」

　夏休み明けに文句つけてやろう。と心に決めた。その途端に目に入ってきたりんご飴の屋台。少し小さめなサイズのそれがキラキラと輝くのに目が奪われてしまった。

　「私、あの屋台行くから」
樹「え！？あっ、ちょっと」

　「行ってきていい？」と聞くほどのもんじゃない、報告でいいはず。と思って、伝えるだけ伝えてその屋台に向かおうとしたが、それは止められた。腕が後ろからクイッと引かれる。

　「なに？離してよ」
樹「一緒に行くから」
　「はぁ？大丈夫だから、そこらで待ってて」
樹「嫌」
　「めんどくさ」
樹「そう思っててもいいから。もう結構人も多いし、はぐれるの怖いでしょ」
　「そんなこと心配すんの？」
樹「そりゃ心配する。はぐれてAちゃんに何かあったら嫌だし」
　「…そうですか」

　はぐれたところで今はもう連絡を取る手段だってあるし、そもそも近くで待っててさえいてくれれば大丈夫なのに。何をそんなに心配してるんだ、とも思いながらも田中くんの顔がいつもの諦めの悪い顔をしていたからしょうがなく私が折れて、二人でりんご飴の屋台に並んだ。

　目のまえにあるりんご飴を一つ選び手に取る。お金を払うとき「俺が払う」とか言い出したのは全力で拒否した。変に借りとか作っておきたくないし。

　包まれていた袋を開けて飴をなめる。甘ったるいのが口の中に広がるのが幸せ。りんご飴って夏祭りくらいでしか見ないし、夏って感じがしてとても良い。

樹「りんご飴好き？」
　「割と」
樹「おいしい？」
　「うん」

　やりとりが子どもみたいだなぁ、なんて思っていれば視線を感じた。その方向を見れば当たり前だけど田中くん。引くくらいにニコニコしている。

樹「そっかぁ。よかったね」

　今舐めてる飴とおんなじくらいの甘さを感じるような声と表情。…なに、今の。

樹「飴って言えばさぁ、この間慎太郎が…」

　さっきの甘さなんて一瞬で消していつも通りの声と表情で話し始める。さっきのは何だったのか。

樹「で、そのもらったぺろぺろキャンディ全部口に入れたんだよ。こんなだよ！？こんくらいデカかったのに！！あの口のデカさは笑ったわ」
　「…ふっ」

　ベラベラと話すその内容が面白くて思わず笑ってしまった。だって森本くん、でっかい飴を全部口に入れたんでしょ？そんなの想像したら笑ってしまう。