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もうしっかり夏になった。暑くて嫌になりそうな休みの日。なんとなく外に出たくなって一人で買い物に出た帰り。電車に乗ろうと駅に入ってすぐ、改札の手前で見慣れた後ろ姿を見つけた。
「樹?」
樹「あ?…Aじゃん。何してんの」
「買い物の帰り。樹は?」
樹「バイト帰り。」
「おつかれ。方向一緒だったよね?どうせなら一緒行こ」
人と話した方が暑さ紛れるかな、と思い誘えば「おう」なんて軽く返事をしてのってきた。…なのに改札を通ろうと歩き出したらすぐに立ち止まる。
「どうした?なんか用思い出した?」
樹「用あったわ。A今から時間ある?」
「は?時間?…あるけど、何?」
樹「ならほら、いくよ」
意図が読めず頭に疑問符を浮かべている間にクルッと背を向けて駅から出て行こうとする。…ついてくると思ってるだろうし、しょうがない。どうせ暇だ。私はその背中を追いかけた。
少し歩いてさっきとは別の駅からちょっと電車に乗って移動する。くだらない話をしている間に目的地が見えたらしい。「ほら、」と指さす。
「水族館、」
指先をたどった先には大きな水族館。
樹「来たいって言ってたじゃん。俺もずっと気になってたし、ちょうどよくね?」
すっかり忘れていた。慎太郎が花と来ていた水族館。「一緒に行こ」と慎太郎に言われて、その瞬間、慎太郎への感情に気付いたあの時、「考えとく」なんて言った気がするけど、それっきりその話をすることはなかった。
樹「いくよ?」
声をかけられるがままついていきチケットを買い中に入る。ここに来てみたかったのは本当。あの写真で見たクラゲの水槽見たかったし。ただ、一緒に来るのが樹とは思わなかった。
ひんやりと涼しい館内。少し暗めの照明とキラキラ輝く水槽に自然とテンションは上がる。
「うわっ!エイだ!」
「あの魚見たことある!ほら、アニメのやつ!」
目につくものの感想がボロボロ出てくる。それを聞いた樹はゲラゲラ笑う。隣で一緒に見てたかと思って話しかければいなくなってて、それを見て少し離れたとこから笑う。いろんなことをして反応を見て馬鹿にしたように笑うから「うざっ!」とか言って軽く肩を叩く。そうすれば「いてっ」なんて大げさに言う。
でも、樹も「サメだ」とか、「でけぇ」とか小学生並みの感想ばっか並べてるから、二人揃って小学生みたい、なんて笑い合った。
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あまは(プロフ) - ありありさん» コメントありがとうございます!ドキドキしていただけてうれしいです!!話も更新ペースもゆっくりかとは思いますが、頑張ります! (2021年11月4日 2時) (レス) id: aa4a13b0c9 (このIDを非表示/違反報告)
ありあり(プロフ) - もうドキドキが止まらなく、すぐにお気に入り登録いたしました!作者様の文才すごい!更新楽しみにしてます!応援しております! (2021年11月3日 18時) (レス) id: 991e71cbdc (このIDを非表示/違反報告)
あまは(プロフ) - かなさん» そう言っていただけてすごくうれしいです!ありがとうございます!ゆっくりになるかとは思いますが、頑張ります!! (2021年10月23日 1時) (レス) id: aa4a13b0c9 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 素敵な作品を見つけてしまった……!更新楽しみにしてます!頑張ってください^ ^ (2021年10月21日 23時) (レス) id: a4d97af994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天羽 | 作成日時:2021年10月8日 3時