【文スト】和菓子屋の夜

秋桜 ページ14

「有難うな、代金はいつもの通り」

「うい〜っす」


中也さんは、そう云い残して店を後にしました。


すっかり夜も更け、辺りに光はありません。

しかし、中也さんは迷うことなく、店から離れていきます。


「いつまで騙せるかな……あの店主たちを」

そうです。中也さんは騙しているんです。あのお二人を。


送り先の病院とは、ポートマフィアの事です。

森さんがひどくこの店を愛しており、ポートマフィアは葉菓子堂のお得意先となり、ポートマフィアも営業先への贈り物には、たびたびこの店の商品を使っております。


この店が潰れない理由、この治安の悪いヨコハマの、こんなに奥にあるのに、未だ元気に営業をしていられるのは、ポートマフィアが二つの面でサポートしているからなのです。


ここのお菓子を大量に購入することの、資金的援助と、辺りに睨みを利かせ、他の組織から守る事。


大量に購入することに関しては、『病院の患者さんや医者に配る』という名目で、何とか今まで隠してきました。


しかし、中也さんをはじめ、『病院の人』として買いに来る方々は、何時もビクビクです。


何せ、あの二人は、冗談抜きで読めません。何を話すのか、何を見ているのか。

何も考えていないようではここでは生きていけませんから、チャランポランに見えてあの二人はなかなかの強者なのです。


だからこそ中也さんは不安なんです。

何時ばれてしまうのか。ばれたらどうなってしまうのか。



なんだかんだで、皆この店が好きなんです。




この店の和菓子も、あの煩い店主兄妹も。



「絶対に、隠し通す」


中也さんは、呟きました。


満月が、赤く染まった中也さんを見下ろしています。


足が浮き、中也さんは消えていきました。



今日買った『秋桜』は、秋桜を模った、白餡の饅頭です。

中也さんも好きな和菓子で。


この和菓子は、中也さんにとって大切な和菓子だそうです。


葉菓子堂は、思い出も作ります。


何があったかは、知りませんけどね。









一方その頃葉菓子堂では



「莫迦兄貴!!付きまとうんじゃねぇよ!!うっとおしい!!」

「されど兄はめげない」


誰かこの兄妹なんとかして

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