Your side.「変わりない」 ページ37
「うわ……」
「うたいさんどうかされましたか？」
前の席の八百万ちゃんが心配そうにこちらを見てきた。珍しい時間帯に病院から連絡が来てるなって思ってメールを確認したのがむしろ今日で良かった気がする。八百万ちゃんに画面を見せながら、
「合宿の日から長期検診が入っちゃって……ずらしてもらえるかなぁ」
「長期検診？どこか悪いところがあるんですか？」
「個性が発達しきってないから、それで年に1度やってるんだ」
「うたいさん、合宿楽しみにされていましたもんね。日程ずらしてもらえる様に祈ってますわ」
かわいらしく胸の前でぐっと拳を作ってそう言ってくれた。ダメ元で日程を送らせてくれないかとメールを打った。
まあ、あまり期待はできないよね…….
＊
案の定病院からずらせない、と返信をもらって急いで相澤さんの元へと向かった。
職員室はいい意味で私にとって緊張感のない場所なので気軽にノックをして入る。
「相澤せーんせい」
「なんだ」
嫌そうな顔をしてパソコンに向かっていた手を止めて私の方を見た。
眉を下げて困った顔をして病院からのメールを見せる。
「合宿の開始日と長期検診の日被っちゃって。ずらしてもらえないって連絡がさっききたんですけど、どうしたらいいですかね？」
「どのくらいかかる？」
「例年通りなら３日。いつも最短で終わらせてもらって３日かかってるから期間を短くしてもらうことも難しいね」
「４日目に病院まで直接迎えに行く」
「病院と姉さんにそう言っておくね。何か異常が見つかって長引きそうなら先生の携帯に連絡するよ」
それじゃあ、と出て行こうとすると呼び止められた。なんだろう、何か提出し忘れたものとかあるっけ？
「この前の試験後、何か変化はあったか」
「……ああ特に何も、
先生は短く返事をしてまたパソコンに向かっていった。睡お姉さんに手を振って職員室を後にする。
……本当に、いつもと変わりがない。みんなの私に対する態度はまるで試験がなかったかのような、そんな——
下に向けた目線を上げて落ちた髪を耳にかけた。
心配しなくても大丈夫。私は今の生活に満足してる、みんなに……兄さんに迷惑をかけちゃいけない。
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