【ヒロアカ】轟弟、危険につき。【男主】 (ページ36)

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Your side.「変わらなきゃ」ページ36

うまく息ができない、握りしめた手がよりいっそう強くなる。そんな私に気がついたのか、睡お姉さんが兄さんを対応するためにカーテンの向こう側に行く。

「轟くん、ありがとう。でも、少し待ってもらえるかしら？」

「わかりました」

兄さんの優しさが痛い。再び睡お姉さんが戻ってきて、行けそう？と声をかけた。

「……私は変わるためにここにきたんだ、でもそれと同じくらい兄さんに嫌われたくないって思ってる」

「無理はしなくていいって雄英に来なければ甘やかしたんだろうけど、ここに来たからにはそう言えないのよね。無理をしなさい、恐怖から目を逸らさないで」

睡お姉さんが先生の顔をして私をまっすぐ見つめる。
ためらいながらも頷いて、ベットから降りた。横に置かれた自分の荷物の中から制服を取り出して着替える。できればこの着替えがずっと終わらないで欲しいと思ったけれどそんな非現実的なことが起こるわけない。
最後のボタンを留めると、妙に喉が渇いた。

意を決してカーテンに手をかけた時、睡お姉さんが耳元で頑張って、と応援してくれた。
2、3度呼吸を整えてカーテンを開けた。

「に、兄……さん。お、またせ」

「融凍っ」

ばっと駆け寄って私を抱きしめた。
一瞬の出来事で何が起こったかまだ理解しきれてない。私を抱きしめて……？え、なんで？
兄さんが安堵のため息をこぼして抱きしめる力がさらに強くなった。

「兄さん、くるし……」

「……起きねえかと思った」

兄さんが小さくそう言った言葉に全てが含まれていた。私が心配だって、良かったって、無理はしないでって。
それから帰ろう、と一言だけ言って保健室を後にした。帰り道の間できっと今日のことを言われるんだと覚悟をしていたけれど、本家に着くまで何も言われなかった。
試験が終わり、２日の休日も今までと変わりなく過ごして兄さんの優しさが返って痛く感じた。

休み明けの学校には行きたくなかった。仮病でも使おうかと一瞬よぎったけれど、逃げるなんて選択肢は私には用意されていない。
重い足取りで登校し、教室に入ったが周りのみんなも何も聞いてこない。ここまで来てしまってたらあの試験の時間はきっと幻想だったんだと、自分の中で昇華し始めていた。