【ヒロアカ】轟弟、危険につき。【男主】 (ページ32)

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No side. 轟弟、危険につきページ32

ボイスの個性にどれだけ氷の壁を作ろうが槍を作ろうが全て音の振動で壊されてしまう。
それを彼は分かっている、分かった上での攻守だった。

声が途切れるその一瞬のスキを狙う。行動不能にしてシールを貼れば終わりなのに彼はそうしない。
いや、忘れていたのだ。既にもう彼の理性は残っていない。
ただ、目の前の敵を排除するだけ。
その証拠に対戦相手であるヒーロー・プレゼントマイクの身体にはあちこちに氷でできた切り傷が見られた。

壊されても壊されても次、次と小さく呟きながら間髪入れずにくるくると氷を向ける。何かを投げたかと思ったら爆発が起きた。
先ほどのアルミニウムとは違い、何もないところから爆発が起こる。

「おいおい、こいつぁシヴィー」

「【水素】」

サポートアイテムである着火チップを投げて、水素爆発を起こす。燃焼後に生まれたわずかな水すら彼の武器となる。

——この時、プレゼントマイクは焦っていた。
長期戦に持ち込まれると明らかに不利になる。長年の付き合いからわかるが本気で戦わなければ間違いなく殺される(・・・・)。
親友の弟を傷つけるのは気が引けるがやるしかない、と。

全力を彼にぶつけると、ビリビリと空気が揺れ、その振動で脆くなった建物のいくつかが崩れた。もちろん真正面からそれを受けた彼も例外ではなく身につけていたガスマスクが壊れ、ポーチの中の試験管が割れた音がする。

しかし彼は怯むことはない、むしろこの瞬間を待っていたようにその拳を握る。先ほどの攻撃がダメージにならないはずがなく、鼻血が出ていた。
拭うこともせず、狂気に満ちた笑顔で氷を纏わせて殴った。

「バ……ケモんが…………！」

「【ねえ、今の効いたって思った？残念。こんなの私には効かないよ。ほら、もっと】」

笑顔を絶やさない彼は、無邪気な子供のように楽しそうにしている。口から出た言葉はとても普段の彼から発せられるものとは思えないほどだ。
振り下ろした拳で地に伏せるプレゼントマイク、見下ろす彼。

この場においての力量が示された瞬間だった。
次の攻撃へのモーションに入ろうとした瞬間、彼は拘束され個性が消された。

「ミッドナイト！！」

「わかってるわよ」

イレイザーが止め、ミッドナイトが眠らせる。ガクンと捕縛布の中で意識を落としたのが試験の中止を告げる合図だった。