【ヒロアカ】轟弟、危険につき。【男主】 (ページ30)

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緑谷 side.「違う」ページ30

試験後でまだまともに起き上がれないけれど、うたいくんがどうやって戦うのか気になって寝たままモニターを見つめた。

すごく気になる。どう個性を使うのかとか、どうやって戦うのかとか。
ヒーロー殺しの時はサポートに徹しているって感じだったから彼が真っ当に戦うのは初めて見ることになる。

相澤先生がカウントした、たった5秒の間に雰囲気が変わった。
きっとつけたガスマスクのせいじゃない。もっと何か違うものを感じた。
いつもの優しくて、笑顔がよく似合う、兄想いのうたいくんはもうそこにはいない。

ぶらん、と身体の力が抜けた後すぐに起きた彼はひどく恐ろしかった。かっちゃんも顔を顰めてそれを黙って見ている。

『スタート』

モニターから機械的に聴こえた先生の合図と共に、一瞬にしてうたいくんがいなくなった。

はやっ……どこに、と思ったときにはもうすでに1人目の敵——パワーローダー先生——にステッカーが貼られていた。

「え……」

突然空中から現れると、先生のコスチュームの特徴でもあるそのヘルメットにぺたりとシールを貼って、地に足をつけることなく氷の足場を作って空へと駆け上がっていく。
使われた足場はすぐに水へと戻ってうたいくんのコスチュームに吸水され、ある程度の高さまで昇ると全体を見下ろした。

早い、そして的確すぎる。僕らとは動きが明らかに違う。職場体験前の授業もどことなく力をセーブしているようにも見えたし……
考え込んでいると、うたいくんは次の敵を見つけたみたいでパチンと指を鳴らした。

2人目の敵はスナイプ先生だ。近接も遠距離も強いし、氷や水くらいならきっと貫通する。もしかしたら相性が悪いタイプの個性かもしれない。
固唾を飲み込んで見守っていると、案の定うたいくんは距離を詰めすぎず、かつ遠くなりすぎずの位置で戦っている。
うたいくんがポーチの中から何か取り出して投げたのが見えた瞬間、モニターが白く光ったと思ったらスナイプ先生の左胸にシールが貼られている。
今のはなんだ？うたいくんが発光系の個性なはずがないし、何かそういう物質……

『マグネシウム、便利だよね。私が水と氷だけの一芸につとまらないことを忘れないで』

マグネシウム！？そっか、酸化反応で発光するんだ。化学反応を利用して…….
でも、そしたらどうやって燃やしたんだろう。サポートアイテム？

うたいくんは初めからわかっていたかのように次の敵のところまで一直線に向かっていった。