『あのときは』 ページ21
よく晴れた午後のことだった。
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「ん、んッー…!」
私は少し樹の下で伸びをした。
本を読みながら寝てしまったようだ。首が痛い。
そろそろ家に帰らないと。
私は本を手にとて立ち上がった。
と、その時だった。
「う、わああああああああああ!」
バサ、ガサガサガサ、ドサッ!
男が降ってきた。
目の前の木から。
「……う、ううぅ…いてぇ…」
怪我、してるんじゃ…。
私はそっと近づき、声をかけた。
「お兄さん、大丈夫?」
「うっ……へーき、だと思……!」
男は起きようとして、またコケた。
「あ、クソっ!足、ひねってる…!」
男は右足を押さえ、言った。
「あの、雑巾爺……!崖から突き落とすとかねーだろ…」
「ねえ足、痛いでしょ。私の家に来る?」
「いや、いい。師匠のとこに行かねーと…イデッ!」
「あんまり無茶は良くない。そこも血が出てる」
「そんな、良いって。見知らぬアンタに迷惑かけるわけにいかねえし」
「……いいから。こっち来て」
「うわっ、ちょっ…引っ張んなよ。今、俺、足……いててて!」
私は男の腕を引いた。
「ここ消毒するね。染みるよー」
「イッテテ…」
男の腕の傷や足をキレイに治療した。
「お師匠さんって、あなたを突き落とした人?」
「ん?まあ、うん」
「ずいぶんスパルタね」
「スパルタって言葉じゃ足りねえくらいスパルタだぜ」
「へえ、怖いね。フフッ」
私は男の話を聞きながら、笑った。
「アンタ…親とかいねえのか?」
「え?」
「こんな森の奥に、女が一人で…」
「まあ…私は特別だから。それに、ここについ最近来たばかりだし」
「……?」
男は不思議そうに首を傾げたが、それ以上は追求しなかった。
「ねえ、お兄さんは名前なんて言うの?」
私は興味本位で聞いた。
「俺か?俺はザップ・レンフロ。じゃあ、あんたは?」
「私は、A。よろしくね」
私は笑った。
「まただここらへんに俺と師匠はいるから…また会いにくる。そんときにお礼できたら…」
「お礼なんていいよ。じゃあね」
「おう」
ザップ・レンフロと名乗った男は、怪我を診てくれてありがとうと言って、笑って出て行った。
それを私は手を振って、見送った。
ザップのお師匠さんって、どんな人なんだろう?
ちょっと気になるなあ…。
『また会いにくる』、か…。
そのとき私は、ここにいるかな?
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わごむ - 好きです(唐突の告白) (2020年5月20日 5時) (レス) id: 37d509fa97 (このIDを非表示/違反報告)
とき(プロフ) - お気に入り登録ありがとうございます!!まだまだ頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年5月31日 19時) (レス) id: 16eb3c1efe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とき | 作成日時:2018年5月30日 17時