【aph】正義の定義【アルフレッド・Ｆ・ジョーンズ】

HERO 10 ページ10

「ねえ、君はどうするの？」
二人しかいない少人数教室に、静かな声が響く。

「絵を描きます」
「そう言うんじゃなくて__ヒーローの秘密を知っちゃった君は、これからどうするの？」
「さあ、どうしましょう」

そんなこと考えたことがなかった。
というか、あれ秘密だったんだ。

「ねえ、共有してよ」
「別にいいですが」
「ばらさない？」
「誰にばらせと」

そうすると彼は『そっか』と目を閉じた。

「ヒーローは、いつでもヒーローなんだよ。
自分の存在意義を求めて、そこら中を駆け巡る。」
「お給料も無いのに」
「自分の存在意義があるじゃないか」
「随分と病んでますね」
「__それでも、全くわからないんだ」

爪が食い込んでしまうのではないか、と言う位に強く拳を握る彼の顔は、苦痛で歪んでいた。
無表情な私には、なにも分からない。
なぜそこまでして自分の存在意義を求めるのか。
別に今の生活に不自由してないし、学校だってぼっちと言うわけではない。
同じクラスの桜ちゃん__菊さんの妹といつも一緒にいる。
甘い空気をすーっと吸い、彼の手を握る。

「血が出ちゃいます」

一本一本指を剥がしていく。
剥がしていくたびに彼の顔が変わるのは、何だか見ていて面白かった。

「別に出てもいいんだけどね」

彼は柔らかな笑みを浮かべ、私をトロリとした目で見つめた。

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