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あの日から ページ36




私が発作を起こしたあの日から。彼に江戸の町に連れていってもらったあの日から、三日が経った。目を開いていることすら億劫で、瞼を閉じている昼下がり。病室には私以外は誰も居ない。発作を起こしてから暫くは酸素マスクを付けていたけれど、それから一日と半分が経過すると落ち着いてきたから一旦外してみようということで、今はもうつけていなかった。けれど、私の身体には心臓の動きをモニターに映すためのものが張り付けられていて、そこから心電図の機械に繋がっている。それが発する音だけが、定期的に静かに病室に響いているだけだった。

このモニターの情報はナースステーションにも繋がっていて、私の心臓に異常があったらすぐに鶴見さんや他の看護師さんが駆け付けられるようになっている。私の心臓はここ数日ずっと監視下に置かれているため、なんとなく居心地が悪かった。


あの日から、彼はここに姿を現してはいない。


それはそうだ。当然だ。だって私はあの時、彼に言い放ったのだ。もうここには来るなと。そう言ってしまったのだから。その言葉を口にしたときの彼の表情を、三日経った今でも鮮明に覚えている。まるで、今も目の前に彼のあの表情があるみたいだった。

絶句しているような、驚いているような、悲しんでいるような苦しんでいるような。そんな、悲痛なものを幾つも浮かべているような彼の顔を、あの時初めて目にして。どうしようもない吐き気のようなものが込み上げた。私が彼をこんな顔にしているのだ、私の吐いた言葉が彼をこんなにも傷付けているのだ。そう考えたら、自分が酷く汚いものに思えて、何もかもを吐き出したくなってしまった。


『もう、ここには、来ないでください』


私の言葉に、彼は、長い空白の時間を置いて。いや。もしかしたらそれは私の体感時間というだけで、そんなに長くもないのかもしれないのだけれど、少しの間を置いてから、『…帰るな』と言って、そのまま私に背を向けた。その声には色だとか温度だとかが抜け落ちていて、それは本当に彼が発した声だったのだろうか、と思ってしまうくらいだった。

彼の背中が見えなくなるまで彼を見つめていた。扉の方に力なく歩いていって、やがて壁に隠れて見えなくなって、彼が扉を開けて病室から出ていって。そうして扉が静かに閉められた瞬間。私の目からは涙が溢れ出た。


口で手を押さえた。声を出してしまわないように。大声で泣いてしまいそうだったから。悲鳴のような声すら上げてしまいそうだったから、必死に声を殺して、私は泣いた。

恩を仇で返す→←そう遠くないうちに



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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