【銀魂】君と共に生きる春 6【坂田銀時】

責めてくれればいい ページ20

＊


心電図の音と、酸素マスクを付けられたAの呼吸の音が病室に響いていた。

あれから、Aの両親は彼女の主治医なのだという医者の話を聞くために部屋に案内されていき、俺は「Aが目を覚ましたときに混乱してしまわないように、傍についていてあげてくれませんか」と頼まれた為にAが運ばれた病室にて椅子に腰掛けていた。新八と神楽は、もう夜も遅いので先に帰すことにした。帰すといっても、神楽は新八の家に今日は泊めてもらうことにしたのだけれど。不安な中、一人で万事屋で待たせておくのは、酷な気がして躊躇われたのだ。

神楽はAが心配だからまだ残っていたいと食い下がったのだが、心配の冷静な説得により渋々帰っていった。が、新八もこの病室から出ていくその瞬間まで、Aのことを心配そうに案じていた。そして、俺のことも。

俺なんか、どうだっていいのだ。Aさえ無事なら。目を覚まして、またいつものように笑った顔を見せてくれるなら、それでいい。俺はベッドに横たわる彼女を見据えながら、けれど布団からはみ出ていたその小さくて、色を少しずつ取り戻していく手のひらに触れることも出来ないまま、ただそれだけを願った。


Aの両親には俺は悪くないと言って貰えたが、それでも俺は自分を責めることをやめられない。夕暮れの色に染まる空気の中で物思いにふけていたせいで、彼女の異変に気付くのが遅れてしまった。もっと早く、Aが急に静かになったことに気付いていれば、あんなにも苦しむことはなかったのかもしれない。冷たくなることはなかったのかもしれない。そう考えたら、自責の念に駆られない訳にはいかなかった。

すぐ傍に居たのに。俺は彼女のすぐ傍に、触れられる距離に居たのに、どうして気付いてやれなかったのだろう。今更後悔しても遅いことは分かっていたけれど、漏れる溜め息を止めることが出来なかった。


「…ごめん」


Aを見つめる。まだ良くはない顔色で、けれど先程のような苦しそうに顔を歪めてはいない表情で眠っている。返事がないことは承知の上で、俺は小さくまた「ごめん」と呟いた。

なんで気付いてくれなかったんだと、そう責めてくれればいい。俺はそれをひたすらに受け止めてひたすらに謝ることしか出来ないけれど、責めてくれればいいのに、きっと彼女は、彼女の家族はそうしないから、それがまた悔しかった。

理解しているつもりでいた→←永遠にも感じられた

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す