永遠にも感じられた ページ19
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永遠にも感じられた、重たい焦燥をこの場に居る全員が抱え込んだ時間が終わりを告げたのはどれくらい時間が経ってからだろうか。時計もないので確認しようがないが、最早そんなことはどうだって良かった。物音ひとつ漏らさないほどに分厚く治療室とこちら側を隔てていた扉が低く響く音を立てながらに開いて、そこから二人の医者が姿を現した。長椅子に座っていた俺やAの両親はその瞬間に立ち上がり、「先生…!」と両親が前のめりになりながら一人の医者のところに駆け寄っていった。俺は立ち上がったままその場で彼等の会話を聞いていた。新八と神楽も疲れたようにうなだれるみたいにしながら、顔をあちらに向けている。
医者は至極冷静な声で「発作で身体にダメージを負っていたものの、何とか持ちこたえました」と告げた。その声には隠しきれない疲労が感じられて手術の壮絶さが垣間見えた気がした。
「状態からして発作の要因としては、心臓の働きが弱まり血液が身体全体に上手く運ばれていなかったり、肺に納まりきれないほどの血液が溜まりうっ血状態になったことが考えられます。どちらも左心不全の症状です」
退院されている間、ちゃんと薬は飲んでいましたか?と医者は両親に問い掛ける。母親は何度も頷きながら「毎日欠かさず飲んでいました」と応えた。それから、もうひとつ医者は尋ねた。
「発作が起こる前、Aさんは何をしていましたか?」
「えっと……そこに居る坂田さんと出掛けていました。ずっと前から約束をしていて…」
母親がそう言うと、医者の視線がこちらを向き「何か、Aさんに変わったことはありませんでしたか?心臓に不可をかけることは行っていませんか?走ったりとか」と言った。彼はその問い掛けに糾弾するような成分は含ませておらず、とても物腰の柔らかそうな声だった。確認のために一応、というような。
「移動するときは原チャリだったんで……負荷をかけねェようにはしてたつもりなんすけど……変わった様子は…発作を起こす前までは特になかったと思います。急に黙り込んで、そしたら発作を起こしていて」
そう応えると医者は「そうですか…」と呟き、少し考える素振りをしては、微かに。本当に、よくよく見ていないと気付けないくらいに小さく不穏に眉を寄せて。
「…この後、お時間はありますでしょうか。ご両親と少しお話がしたい」
「えぇ、大丈夫です」
「ありがとうございます」
そんなやり取りをぼんやりと聞いていれば、自動で閉じられていた扉が再び開き、移動ベッドに寝かされたAが治療室から出てきた。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年6月1日 22時