素敵なことがあったんだと ページ17
「……君が、噂の坂田さん」
「は、はい」
彼女の隣から俺のことを真っ直ぐに見据えていた父親が俺の名前を呼び、俺はやはり妙に緊張してしまう。らしくもなく背筋を伸ばして声を堅くさせてしまう。Aの父親はそれから俺の元に居る二人にも視線を向けて、「そこのお二人が、新八くんと神楽ちゃんかな」と穏やかな笑みを浮かべながらにそう問い掛けた。新八は小さく「はい」と応え、神楽はこくりと頷いた。
疲れたような、やつれたような影を落としつつも、こちらを気遣っているのか浮かべた笑みを崩さずに、彼は「娘から皆さん……万事屋さんの話を聞きましたよ」と。静かに語る。
「僕は仕事の関係で、あまり面会に顔を出せなくて、中々娘に会えなかったんです。でもこの間Aが退院して家に帰ってきたとき、久し振りに会って驚きました」
おかえりと言ってくれたあの子の表情が、すごく明るくなっていたから、と。その時に彼が感じた感情が漏れ出してくるように彼は幸せそうに笑っていて。その表情は、Aがたまに不意に見せてくれる仄かな笑みと、よく似ているように見えた。
「……聞いてると思いますが、あの子は小さい頃から病のために外で遊ぶことも出来ず、友達が居なくて、私達の前では笑ってくれていましたが……なんと言いますか…時々子供の顔だとは思えないような表情を、していたんです」
俺はその話を聞きながら、以前Aが見せた、切なそうな、何とも言えない表情を思い出していた。当時の俺は見たことのない彼女の表情を見て『何かあったか』と尋ねてみたものの、『何でもないです』と返されてしまったのだ。納得したふりをしたけれど、暫く俺の頭の中でその時の彼女の表情が離れてくれなかった。
「僕はその表情を、今でも忘れられません。でも、あの子があんなに笑っているのを見たとき、きっととても素敵なことがあったんだって、思いました」
それが、皆さんだったんですね、と。彼は言った。しっかりとこちらを見据えて、そうして立ち上がっては俺の目の前に立った。
「ありがとう、娘は皆さんのおかげで、あんなに笑えるようになった」
僕はそれが、とても嬉しい、と。涙すら流しそうなその切実な彼の表情に、こっちが何だか泣きたくなってくる。
Aは、この両親の元で育ってきたのだ。
「俺達も、娘さんには、スゲェ良くして貰ってて……コイツらもすっかりなついてて」
「Aさんには、いつもお世話になってます」
「いっぱいお菓子とかご馳走してくれたアル」
二人も立ち上がりAの父親と向き合った。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年6月1日 22時