笑うな:診断メーカー[イチャイチャしましょ!より] ページ8
病室の扉が勢い良く開いた。
自分一人だけでゆったりしていた空間に駆け込まれた私は少し腹を立てる。手当されても尚痛む腹の傷にさえ音は響くようだった。先ず腹の傷よりも二日酔いのように激しい痛みを未だに外へと出していない自分の頭に腹が立つ。
さっきから腹立ってばっかだけど私はカルシム不足か何かなのだろうか。
「天哉?病院では静かに__」
「どうして僕を呼ばなかった!!」
「……お前、他の奴に応戦してたろ」
情けなく顔を涙で汚している姿を世間様が見たら不安がるだろう。微かに動く左腕を動かして彼の濡れた頬をゆったりと親指で拭う。いつもは仕事だらけのお堅い頭も私の事となると直ぐに集中が切れてしまうようだ。あー、幸せ者だなぁと呑気に考えていれば強く握られる左手。
「いだだだだッ!!痛い、痛いって!!何!?」
「……笑うんじゃない、微笑むな」
「答えになってませんよ!?天哉クン!!」
左手を離さず顔を附むけたままの彼。時折、鼻を啜る音が室内に響く。何を話す訳でもなく唯時間が流れる。命に関わる程の怪我では無いはずだ。何故、今にも死にそうな雰囲気を出しているのか。弱々しいけれど握り返すと彼は繋がれた手に顔を擦り寄せる。
「怪我なんて付き物だろ?あ、あん時の女の子……」
「……無事だったよ。明日、面会に来るって」
「そっかそっか」
左手が離されると同時に彼の頭を何度か柔らかく叩く。けれど彼は変わらず附向いたまま、落ちる涙はシーツを濡らしていった。少し上がった目線の先は私の右腕で、顔を歪めたと思ったらまた視線を落とす。
事件の際に女の子を守ろうと抱えて走っていた時に壁の欠片が落ちてきたのだ。避けきれずに右腕の上腕を開放骨折。先程、治療を終えたばかりであまり元気ではない状態。もう少ししたらリカバリーガールが来て接吻されるとかされないとか。
「……充分に接吻されて息絶えてしまえ」
「お!?結局、死ねってか!?あ!?」
「心配、だったんだぞ……」
彼の震える声に胸が苦しくなる。
再び濡れ出した彼の瞳は私を射抜く。
「接吻しよう!!」
「……キミは本当に良く分からないな」
久々に触れる唇に笑みが溢れる。夢中になってしまう。唯一動く左手は彼の後頭部に回して精一杯に首の角度を変えながら深く口付けていく。離れても、もう一度。天哉は紅く染まった顔を苦しそうに歪めている。
「さぁ退いた退いた。次の接吻は私さね」
「……天哉、また後でな」
「もうしないよ……恥ずかしい」
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めめ - グッッッッエロイ…最高です。これからも鼻血を出しながら応援してます。 (2020年5月12日 1時) (レス) id: b778857664 (このIDを非表示/違反報告)
はなぢ(プロフ) - 飯田くんと浦埜さんのカップルめちゃくちゃ素敵です…!!!二人とも生き生きしてて、なんだか本当にが居るみたいでシリーズ一気に読んでしまいました!!!!!!大好きです!!!続きを楽しみにしています!!!!!! (2019年7月11日 4時) (レス) id: 1b42be763c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バーコード | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=sakur01
作成日時:2019年4月25日 23時