しゃくまのおひるねじかんっ！にぃっ！

・嘘の話 ページ15

・




照「……」





「……」









割れた窓ガラスから昼下がりの風が吹き込んでくる。









気持ちいいね



今日もいい天気だなぁ









照「……あのさ、」





「後で片付けるよ」









ビリビリになったシーツは弁償するし、



粉々になってるパソコンは、ちゃんとバックアップを取ってる




ちゃんと、するからさ









「もう、ほっといてくれないかな」





照「……、ごめん」





「君が謝ることじゃないよ」









だって、関係ないもの









―取り消してよっ、今の言葉すぐに取り消してっ！！―








―私、お母さんになんてなれないっ、―








―貴方が望むような奥さんにはなれないっ、―









「うっ……」




照「A、」




「触らない、で」








吐き気がする。








冷たい手の感触




もう二度と開くことはない目









全部、全部私のせいだ。









誰かに頼るなんて、そんな甘え、許されない









「うっ、おっぇ……」




照「ナースコール押すか？」




「いい、どうせ吐けはしない、から……」









それは分かってるけど


やっぱり胸は押し潰されるように苦しくて


頭が割れそうになる。





身体を倒して、全部抱え込むように視界を閉ざしたら


亮平が笑ってるような気がした









「はっ、あはは……」









そうだね、そのぐらいして当然だよね



ちゃんと償ったら、また、貴方に会いたいな






許してほしい









あと、できるなら一度だけ









『……A？』





「りょう、へぃ……」









背中をさするあったかい手







亮平の手だ





嬉しい、また会えた









「亮平、りょうへ……っ」









零れ落ちる涙はうれし泣きなのに、しょっぱくて






「だき、しめて……」








縋りつくように掴んだ裾の手を



大好きな手が、ゆっくりと握りしめて









『……大好きだよ』






「わた、し、も、」









抱き合う身体から、気持ち悪さが


すぅーっと消えていく。









肩越しに見える白いカーテンが


一陣の風で大きく揺れた。







絞り出すように言葉を口にしたら


目をつぶって、彼の温もりで残りのすべてに蓋をした。









照「……」





川「『……大好き、だよ』」

・→←・私の話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す