しゃくまのおひるねじかんっ！ (ページ18)

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・きみとよろしくねのときのはなしページ18

・

『さくまは、元々別の家でモニターされてたんです。

　ですが、引き取った方と生活していく中で

　トラブルが発生して、』

「トラブル？」

ソファの上で、泣きつかれたのか

ぐっすり眠っているさくまに

お姉さんはチラッと目をやって。

『その……、放棄を受けたんです』

ゆっくりと丁寧に説明してくれた内容は

胸を掻きむしりたくなるような、歯痒さをつれてきた。

もちろん適正検査を受けてもらって、

結果は良好だったと。

そして本人も、「前向きに引き取りを希望する」って言ったから

さくまの預かりを進めたのだと。

最初の内はかわいがってもらってたらしい。

定期健診の時も異常はなくて、さくまは楽しそうに

家での出来事を話してて

でも、その検診が２ヶ月を過ぎた頃から

途切れて

研究所から連絡しても返事が来なくなって

結果的に、強制家庭訪問をした時、

見つかったさくまは

クローゼットに閉じ込められたまま

ぐったりと、痩せこけた姿だったそう。

『事情を聞いたところ、

　「飽きた」と、その方は仰ってました……』

「飽きた、ってそんな、」

おもちゃでもあるまいし

こんな、限りなく「人間」で

こんな、小さい「子ども」に

どうして、そんなことが言えた？

『セラピーキッズは、癒す目的でつくられた存在です。

　ですから、彼らには

　誰かを嫌いになる要素を限りなく低く設定しています。

　しかし、それが転じて、自分を責める傾向があって

　さくまも保護された後はずっと

　「自分が悪い、役にたてなかったから」と

　自壊しかねないような、状況で、』

お姉さんが、ハンカチを取り出す。

僅かに漏れる嗚咽の間に、「ごめんなさい」が聞こえる。

あぁ、きっとこの人達にとって

さくまたちは、自分の子どもみたいにかわいいんだろうな

愛しいんだろうな、

誰かを幸せにして、でも、

誰よりも幸せになってほしいんだろうな

そんな子どもが、自分から死のうとすることが

どれだけ、心を抉る苦しみを伴うか。

全てをはかり知ることはできなくても、私にも分かる。

『グスッ……、取り乱しました。ごめんなさい』

「いえ、……」

すっぴんの顔を拭いながら、首を振る。

卓上のコーヒーは手もつけられないまま

ゆっくり熱を下げていった。