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とまぁ、しおらしくしたりして
綺麗にかわしたつもりだったのに
案外、周到な照君によって
いつの間にか私はその協力者にエントリーされてたらしく
あれよあれよと検査を受けて、
あれよあれよと合格してしまった。
『セラピーキッズ、次世代型心的医療介助……』
長い、これ以上は読める気がしない。
というか、セラピーに検査って
あの野郎、私のこと病人扱いしやがって。
えぇ、おかげで適正だったよ。
一応合格ってことで送られてきた事前資料によると
どうやら、子どもと言ってもただの子どもじゃないらしくて
何らかの事情を抱えた人達のところでお世話になって
癒すことを目的につくられた存在らしい。
へぇ、私が引きこもりしてる間に時代はここまで進んだのね。
ってか、つくられたってことは
多少なりともシステマチックな要素が彼らにはある訳で
ヨロシクオネガイシマス、ゴ主人様。みたいな
どこぞの店頭に立ってるロボットみたいな感じなのかしら。
私、あぁいうの遠くから観察してるタイプなんだけどなぁ
って、
『……ふふ、何言ってんだか』
あれだけ、子どもは嫌だって喚いてた私が
案外すんなり、受け入れようとしてるのねって思ったら
虚しい笑みが浮かんだ。
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試用期間は半年、1ヵ月に一回の定期健診があって
引き取り希望もできる。と。
申し訳ないけど、やっぱり断ろう
2週間とかなら考えなくもないけど、半年なんて
私には無理だから。
色々悩んだ結果、何も用意しないで待ってた玄関先
ピンポーン
『こんにちは、お邪魔しますね』
人懐っこい女の人の膝にくっついて、かくれんぼしてたのが
『ほら、ごあいさつは?』
さ「……」
『ごめんなさい、さくまだいすけって言うんですけどね』
泣きそうな顔をしてた、キミだった。
『さくま、ほら、練習したでしょ?』
さ「……(むぎゅーっ)」
へぇ、どうやら私が思ったより人間みたい
目の前の悶着を、つい作家の興味本位で観察しながら
膝裏に隠れたまま顔を出さないキミを眺めてた。
『さくま、ちゃんとしないとダメでしょ!』
ついにちょっと怒られたキミは
泣きべそかいた顔で、チラッとだけ顔を覗かせて
さ「しゃくま、です……っ、うぅ、グスッ」
そのまま泣いちゃったんだよね
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作者名:さくまり | 作成日時:2020年9月16日 4時