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照「これ、さくまにおみやげのケーキと
人形と、あとついでに今度のイベントの資料な」
「どっちが本題なのよ、どっちが」
あと、ずっとさくまをにっこにこの目で追うのやめなさい
仕事しに来たんでしょうが、アンタ。
お土産はありがたく「2人」でもらいますけど
冷蔵庫にケーキをしまったら、
ダイニングに座ってる照君用にココア、
自分用にコーヒーを淹れる。
「はい、」
照「あざ、」
「子ども向けトークイベント、だったっけ？
何で二者択一だったのよ。どっちも断ってよ」
照「あのなぁ、これでもお前の懐を少しでもあっためようって
俺なりの優しさなの。
嫌なら、もう少しなんか書け」
「あいあい、ありがとぉございます。
でも、アニメ化のおかげで
また増版決まったんでしょ？『きみこい』」
照「まぁ、そうなんだけどさ」
「あちっ」ってビクつきながらココアを飲んでる27歳。
こんな筋肉マンが新しい担当編集ですって言われた時は
正直「ついに見放されたなぁ」って思ったよね。
トレーニング雑誌から移動して最初の担当が私って
お互い、問題児扱いされてるんだろうなって
勝手に憐れんでたけど
どうやら、それは私の勘違いだったらしくて
『俺、「君よこい、と夏。」に救われたんです』
って初顔合わせの時、真剣な目で言われて
本当に人は見かけによらないって久々にビックリしたっけ？
聞けば、私の編集やりたいって前々から希望出してたのが
何年越しに叶ったとからしく
『俺、先生の大ファンです』って
言ってたあの頃のウブな輝きはどこへ行ったのやら。
今じゃ「お前」だの「ニート」だの呼ばれてますが
照「編集長がさ、アニメ化の今が波だから
新作出すにはいいんじゃないかって言ってた」
「それ、ドラマ化した時も同じこと言ってなかった？」
照「ここまできたら、1つのネタなんだろ。これも」
ネタになっちゃってごめんなさいね
ほんと、笑えないジョークだけど。
照「A、」
「ん？」
照「……まだダメなの？
俺にできることなら、何でもするからさ」
マグを持つ私の手に、大きな手が重なる。
さくまはソファの向こうで、ごきげんに回ってる。
照「……なぁ、」
「今は、さくまがいるから」
離した手で手持ち無沙汰に撫でる髪の毛。
ほんと、笑えないよね。
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作者名：さくまり
| 作成日時：2020年9月16日 4時
