愛、すべし ページ41
『ガクガク隠れて！！！』
華奢な腕に力強く抱かれ、俺の視界は彼女のセーラーで埋まる。
『大丈夫大丈夫だからねガクｯｯ！！』
その声が脳を回る度俺の脳はどんどん彼女に侵食され、とうとう目が冴えてしまった。彼女が用意してくれた客間を抜け出して、離れに位置する彼女の部屋に足を運ぶ。Aさんの家族に遭遇したら一巻の終わりだなぁ、他人事のように思った。
部屋の扉の前に立つ。意味もなく深呼吸して彼女の名を呼んだ。………返事はない。
｢Aさん｣
もう一度呼んで、ドアノブに手をかけた。
俺の知っている彼女の眠りは浅い。俺がどんなに気配を消そうと近づけば目を覚まし、おはようと俺に笑う。………そんな彼女が。
｢寝てる？Aさん｣
今はこんなに近づいて声をかけても起きやしない。まるで死人のような彼女の寝顔は、俺の心臓を凍てつかせた。
｢…………起きて、Aさん。聞きたいことがあンだけど……｣
………起きない。
起きてなくても、いいか。別に返事が欲しいワケじゃなかった。ただ俺は、自分が納得出来る理由を見つけ出したかっただけだったから。
｢………Aさんにとっての俺は、まだ守らなきゃダメなほど弱っちい存在？｣
彼女のまろい頬を撫でる。すると、やっと薄ら開いた瞳に俺が映った。瞳孔が開いて、目の前の彼女を鮮明に形取る。彼女の瞳に反射して歪んでいる俺は、もしかしたら彼女の中では耳が四つ付いているのかもしれない。
｢こぎつね？｣
｢うん、当たり｣
｢………ふふ、こっちおいで。寒いでしょ？｣
Aさんが俺の腕を引っ張る。そのまま暖かい布団の中に招き入れられて、そのまま腕の中へ。そのまま再び微睡みに沈んだ彼女の頬を俺の手で包んだ。
｢………呑気な顔しちゃってさ、｣
あの頃はカナエ君の側にいる時以外、こんな顔しなかった。彼女にとって俺は、あらゆる害から守るべき存在で、平穏を享受出来る存在ではなかったからだろうか。
それとも、彼女にとって俺は自分のエゴから出来た罪を纏う存在だから？……なら。
｢なんで死んだの、｣
俺も、カナエ君もズハ君もみんな遺して、君は、呆気なく死んでしまった。分かっている。人間は弱い。でも君はただの人間じゃなかったはずなのに。
｢………………分かってるよ｣
君が彼より己を優先するわけないって。
脳に蘇る忌々しい記憶にそう独りごちた。彼女の腕の中は、ずっと暖かい。
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ぴた(プロフ) - 剣道部さん» コメントありがとうございます！出来るだけ更新できるよう頑張ります！ (2023年1月29日 9時) (
レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
剣道部 - のんびり更新待ってます ‼️ (2023年1月28日 16時) (レス) @page45 id: 92ba65462e (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 剣道部さん» コメントと応援ありがとうございます🥰少しずつですがそちらの物語も出して行こうと思うので良ければ末永くお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2023年1月10日 18時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
剣道部 - ただの推し大好きおバカ良質夢小説だと思ってニコニコ読んでたら壮大な裏が隠されてそうでさらにニコニコしてしまいました超応援してます ; ; (2023年1月10日 0時) (レス) @page35 id: 92ba65462e (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 青月さん» ありがとうございます😭無知であったとしても素通りできるような事態ではありませんでした。解決出来たのは読者の皆様のおかげです。本当に、感謝でいっぱいです。 (2022年12月22日 16時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2022年12月18日 15時
