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2. 瓶の中身の、 ページ5

「随分傷ついていたようだけど、なんて言ったの?」

しんぺい神は呆れたように聞いてきた。

傷ついていたというのは彼のことだろう。

随分丁寧に話す、紳士の彼。

「いや、君はしんぺい神の助手なのか?とだけ…」

聞いてしまってから悪い質問だったことには気づいたが。

しんぺい神は深くため息をついた。

顔をしかめるが、自分が悪かったことなどは理解している。

しんぺい神の態度は正しいものだ。

「あの子のことは何も覚えていない?」

記憶の糸を辿り、思い出を振り返るが、数年前のあの時で記憶は切れていた。

「いや…多分会っているとは思うんだが」

初対面であれば、とっさに安全だと思うことはありえない。

2、3回しか会っていなければ、俺はまだ警戒するし、一挙一動を注意深く観察するようにしている。

俺は、少なくとも5回以上は彼に会っていて、親しくしていたはずだ。

彼の纏う空気は落ち着くもので、そんな感覚は友人かそれ以上の関係でないとおかしいものだった。

「…助手なのか質問した後、否定されて、ならなぜいるのか、と聞こうとしたんだ…」

「聞いたの?」

「聞いてない。聞かなくても、なんとなく分かったからな」

「そこまで察したのに?」

「……」

掛け布団を握り、コクリと頷いた。

「…まあ自分たちで何とかしてくれないといけない事だからね」

「…そうだな」

俯くと、耳元でパァンと手を叩かれた。

暗くなっていた空気も同時にはらわれていく。

「それよりも!僕は別の話をしたかったんだよ」

「別の話?」

突然の大きな音に驚いて、しかし先ほどの彼が言っていた “しんぺい神の話” がこれの事なのかもしれない、と思い出した。

「そこそこ回復してきたし、グルッペン達と会わせたいなと思って。
もちろんまだ体調が優れないようならあれだけど…」

グルッペンか。

俺が寝ていた間、どうしていたのだろうか。

医務室の設備が良くなっているあたり、国としては大変な成長をしているようだが。

弟の方も、成長しているのだろうか。

「いいや、大丈夫だ。明日か?」

「すぐには都合がつかないだろうから、そうだね」

「分かった」

仲間も、増えていたりするのだろうか。

ヘルメットの彼や、瓶底眼鏡をかけた…

…誰だ?

今の記憶はなんだ?

俺は、どうもただ寝ていたわけじゃなさそうだ。

寝ていた記憶はあっても、どこかおかしい。

首を傾げる俺に、明日に向けて体力温存しといてね、としんぺい神が言い、去っていった。

2. 声を交わして、→←2. 覚悟と知るのは違うもので、



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nomisan - いやー、ありがとうございます!このラストのおかげで私の検索履歴はだいぶロマンチックなことになりました…。これからももうしばらくお願いいたします! (2019年10月13日 21時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)
背教者Ζ(プロフ) - 本編完結おめでとうございます! どっちのエンドも良かったですが、自分の好みは二番目のラストですね。婉曲な愛の言葉が刺さりました… α、βも説明一行だけでご飯三杯はいけますね( ˙-˙ ) 番外編も楽しみにしてます! 無理のない程度で頑張ってください(矛盾) (2019年10月13日 0時) (レス) id: 03d3cf7e0f (このIDを非表示/違反報告)
nomisan - ありがとうございます…!個人的になかなか考えたシーンなのでそう言っていただけると嬉しいです…! (2019年9月14日 23時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)
背教者Ζ(プロフ) - 日記から思い出すシーンの表現力高すぎませんか……すごく引き込まれるというか、心境の揺らぎの鮮やかさというか。応援してます。 (2019年9月14日 10時) (レス) id: 03d3cf7e0f (このIDを非表示/違反報告)
nomisan - ありがとうございます。コメントでどれだけ救われるか…。しっかりと完結まで頑張りたいと思います。 (2019年9月9日 14時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nomisan | 作成日時:2019年8月26日 22時

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