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2. あなたと笑えるのなら、 ページ13

日記のページを捲るごとに、だんだんと顔が熱くなっていく。

自分の事が事細かに書かれているせいか、それをAが見ていた事を知ったせいか。

「A…これ…」

どうしてこれを書いたんですか、そう聞こうとすると、先回りするようにAが答えた。

「どうやら、記憶を無くした時用の記録らしい。
俺もよくは覚えていないが、記憶を取り戻す時の手がかりにしようとしたんだろう」

私が全部読んだのを確認したのか、Aは手から日記を抜き取り、そっと閉じた。

少し耳が赤いので、じっくり読まれたのが恥ずかしかったのだろうか。

たしかに自分の文を目の前で見られるというのはなかなかに緊張するし照れる。

「少しずつヒントを書いていって、最後に全て思い出されるようにしたかったんだ。
一気に思い出すと脳に負荷がかかって熱が出るかもしれないからな。
まあ結果的に気絶はしてしまったんだが…」

ヒントだなんだというのは日記の内容の事だろう。

たしかに主語はなかったし、私の名前が出てきたのは最後だ。

そこを鍵にしたかったのだろうか。

…いや、それよりも気絶というところが気になる。

「大丈夫なんですか?」

顔色は悪くなさそうだが…

「ああ。多少は思い出していたからな。寝ている間にある程度は整理されたらしい」

流石に幽霊の時の事を全て覚えてはいないんだけどな。とAが言った。

「そうなんですか?」

「ん…特に、エーミールと会う前の事が抜けてる。
…あるだろ?なんか、そうだな…戦争を知る前の自分がどうしていたのか、とか思い出せないような…えー…」

「…たしかに、とびきり楽しいことに出会うと、その楽しい事をやっている時間、昔の自分が一体何をしていたのか思い出せないことってありますよね」

「…そう!そんな感じだ!エーミールと会ってからの、戦争とかの話をしていた記憶しかないんだ」

ビシッと指を指され興奮気味に言われる。

…自分との時間を楽しいこと、と言われるとなんか嬉しいな。

「まあしかしグルッペンとかトントンとかは覚えてたぞ。幽霊になる前の記憶だからだろうな」

「たしかに、普通に話してましたもんね」

「あそこで “誰だ?” とならなかったのは良かったが…エーミールの事を忘れてしまっていたな。

すまない」

Aが軽く頭を下げた。

寝たきりで伸びた髪がさらりと落ちる。

そのつむじを見て、少し顔をしかめた。

Aだけのせいではないのに。

2. ストックの咲くその庭で、→←2. 小さな窓から溢れるそれは、



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nomisan - いやー、ありがとうございます!このラストのおかげで私の検索履歴はだいぶロマンチックなことになりました…。これからももうしばらくお願いいたします! (2019年10月13日 21時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)
背教者Ζ(プロフ) - 本編完結おめでとうございます! どっちのエンドも良かったですが、自分の好みは二番目のラストですね。婉曲な愛の言葉が刺さりました… α、βも説明一行だけでご飯三杯はいけますね( ˙-˙ ) 番外編も楽しみにしてます! 無理のない程度で頑張ってください(矛盾) (2019年10月13日 0時) (レス) id: 03d3cf7e0f (このIDを非表示/違反報告)
nomisan - ありがとうございます…!個人的になかなか考えたシーンなのでそう言っていただけると嬉しいです…! (2019年9月14日 23時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)
背教者Ζ(プロフ) - 日記から思い出すシーンの表現力高すぎませんか……すごく引き込まれるというか、心境の揺らぎの鮮やかさというか。応援してます。 (2019年9月14日 10時) (レス) id: 03d3cf7e0f (このIDを非表示/違反報告)
nomisan - ありがとうございます。コメントでどれだけ救われるか…。しっかりと完結まで頑張りたいと思います。 (2019年9月9日 14時) (レス) id: ec834518e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nomisan | 作成日時:2019年8月26日 22時

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