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六、墜ちる
皮肉なことに、「最近の小雪太夫には影があってそれがまたそそられる」とかなんとかで、私の人気はますます上がった。
そんなこと望みはしていないのに。
私の願いはただ一つ。
決して叶わない。
それなら生きていて何の意味があるのだろう。
そう思うのに、死ぬことはできなかった。
またあなたが来てくれるかもしれないと思うと、その笑顔が見たくて私はまだ頑張れた。
朔や他の遊女、奥様も心配してくれてるしね。
それでも抱かれるときにはどうしても死にたくなる。
助けて。
ここから連れ出して。
どうか、お願いだから。
「楼主にお前を身請けする話を持ち掛けたぞ、小雪」
安藤様が私の肩を抱き床に入りながら囁く。
今からに備えて心を殺そうとしていた私も、流石に驚いた。
「ほんまに？安藤様が私を買ってくれはるん？」
そう言いながら激しく動揺する。
身請けされて、今度はこの人に一生飼われるの？
そしてそこには佐久間さんは決して遊びにくることはない。
もう会えなくなる。
周りは祝福するのだろう。
良かったね、幸せになってねって。
より救いのない地獄に落ちるだけのように思えるのに。何がめでたいというの。
いつか忘れられる気持ちなのかもしれなくとも、私はもう心だけ別の人のものでいることに耐えられそうになかった。
奥様、私はあなたほど強くないみたいです。
安藤様に抱かれている最中に、初めて涙が流れる。
「おお、嬉しくて泣いてくれるか」
彼は都合良く解釈してくれた。
否定も肯定もしない。
ぼうっとここ以外のところに意識を向ける。
どたどたと足音荒く廊下を歩く音がしていた。
壬生浪でも来ているのだろうか。
突然ばしん！と襖が開く。
明らかに行為中なのが分かるはずなのにあまりに無遠慮で、私は布団を胸元まで引き上げ固まった。
廊下に立って私たちを冷たい瞳で見下ろしているのは佐久間さんだった。
焦った様子の若い衆が追って走ってくる気配が近づいてきている。
制止を振り切ってここまで入り込んだのだろうか。
でも、どうして。
声も出せない私たちを無視して、佐久間さんは抱えていた木箱を開ける。
え、それって、
じゃらじゃらじゃらじゃら…！
きんきらと蝋燭の光を反射し、宙を舞った小判が畳の上にぶち撒けられた。
金貨が山と積もって全てこぼしきった佐久間さんは空になった箱をぽい、と小判の隣りに投げ捨てる。
ごん、と音がした。
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ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ふ様、こんにちは！3人とも好きでいてくださり嬉しいです。ありがとうございます！癒しになったとの事で、そう言ってもらえるこちらこそそのコメントに癒されました。それぞれ作品作り頑張りますね！本当にありがとうございました。 (2021年2月7日 12時) (
レス) id: 32279ed1b4 (このIDを非表示/違反報告)
さくまり(プロフ) - ちょなさん» ちょなさん、ありがとうございます！『午後３時、〜』を描いたさくまりです。そうですね、芸術という浮遊感のある題材がうまく融合した結果かなと思ったりしてます(笑)他にも非現実的なサクマさんを個人的によく描くのでよかったら遊びにいらしてください。 (2021年2月7日 12時) (レス) id: fd6b65100e (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 御三方のファンなので、この作品と企画に心躍って日々の癒やしになりました！儚い中に身体が熱くなる瞬間が散りばめられてるので幸せになりました。個々の作品もこれからも楽しみにしてます☆ (2021年2月7日 11時) (レス) id: 3ae47a3069 (このIDを非表示/違反報告)
ちょな(プロフ) - さくま担ではないのですが、お話を読むともっともっとさくまが好きになりました。全部大好きな作品なのですが、特に午後3時〜は非現実的なお話ですが話に入り込みすぎてしまい最後には涙が出てきてしまうほどでした…笑 (2021年2月7日 10時) (レス) id: c0ece75cb2 (このIDを非表示/違反報告)
さくまり(プロフ) - Ricoさん» Ricoさんこんばんは、こちらの作品にもいらしてくださってありがとうございます！即読み感謝です。喜んでいただけたみたいで私も嬉しい…、またやりたいなぁとは私も思っているので、その時は遊びにいらしてください。桜のサクマさんもいつでも待ってます。 (2021年2月7日 0時) (レス) id: 9bcf79dd74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐久間愛で隊☆ x他3人 | 作成日時：2020年10月14日 13時
