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兄は僕の持っていたマントを受け取ると、僕に着せた。
「ほら、ヒーローの出番だ。」
ニッ、と笑って兄が言う。
「そうだろ？」
視線がかちあう。少しの沈黙ののち、僕は大きく頷いた。その時だった。思わず身震いするほどの嫌な予感がした。窓を見やると、先ほどの怪物がこちらを覗き込んできていた。飛び出してきた悲鳴を無理やり飲み込む。
「なんなんだよお前！俺たちになんの用なんだ！」
思わず怪物に向けて叫んだ。どうせ聞こえていないだろ、と思っていたが、急に頭に声が響いた。
『人はこの世に要りません。週末を迎える時が来ました。』
淡々とした、男とも、女とも、老人にも子供にも聞こえる、不思議な声だったが、不思議とその声が目の前の怪物から聞こえているのだとわかった。
「そんな…なんだよ、なんの権限があって…」
『人はこの世に要りません……』
怪物は同じ言葉を繰り返す。どうやら、言葉が通じているわけではないようだ。僕は怪物との会話を諦めた。ゆっくりと後ろに下がって、出口を目指す。刹那、怪物が部屋に突進を試みてくる。それを合図に、兄は僕の手を引いて部屋を飛び出した。今にも崩れそうなほどに揺れる家の中を、なんとか走って階段の上にまできた時、兄がふと足を止めた。どうしたのかと兄の視線の先をみると、そこにはベランダにつながる大きめの窓があった。奥のベランダはボロボロに壊れて崩れ落ちてしまっているようだが、窓はかろうじて原型を保っている。
「…まさか、兄ちゃん？」
僕は、なんとなく兄が何をしようとしているのかがわかってしまい、声を上げた。
「そのまさかだよ。」
兄はつぶやくと、僕を持ち抱えた。そして窓をこじ開け、そのままの勢いで体を宙に舞わせる。
「うわあああああ！」
僕が叫んでいる間にあっという間に地面に着地した。
「いててて…思ったよっり衝撃が腰にきた…」
兄が年寄りめいたことをのたまい、腰をトントンしてみせる。
「…死ぬかと思った。」
僕が文句を言うと、兄は笑って僕の頭を撫でた。子供扱いされた気がして、少しムッとして、抗議しようとした時、後ろから轟音と共に土煙が立ち上った。振り返ると、家があった場所にはたくさんの残骸があるだけだった。
「…え？」
「嘘だろ」
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七輪(プロフ) - コメント失礼します 「光か、闇か、抵抗か。」に参加しています七輪です 美空さんの登場するお話を「花街蒼の手帳」にて投稿致しましたのでご報告にまいりました！ (2022年9月6日 18時) (
レス) id: 508fa4b0c0 (このIDを非表示/違反報告)
元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます！生意気なショタだ！かわいい！！不備等ございませんのでこのまま受理させていただきます！ (2022年5月15日 13時) (レス) id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔間文秋 | 作成日時：2022年5月8日 14時
