その笑顔に救われた【桃】 (ページ4)

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「君、名前は？」

『………A』

「…Aちゃん。あそこで何しようとしてたの？」

『…いや、特に…』

「嘘だ！！」

…ていうか、体勢そのままだった。

離れようとすると手を掴まれる。

「…どこ行くの？」

『いや、あの、ずっと上にいるのもどうなのかなって思って離れただけ…』

「え？あ、そっか！ごめんね！」

あの人は私の手を掴んだまま

荷物とキャップを持って道の端まで移動した。

「で？何しようとしてたの？」

手を掴んだまま聞いてくる。

『…手』

「…Aちゃんがどっか行っちゃう気がするから離さないよ。で？」

…鋭い。

話をそらそうとしても戻してくる。

『…もう、何もいらないかなって』

私が抽象的に話すと黙り込んでしまった。

困るよね、こんな言い方して。

「…あのさ、Aちゃん。俺、あとちょっとで誕生日なんだ」

『…そうなんだ』

…知ってる。

「祝ってよ」

『…いいよ』

「…よし！じゃあ行こっか！」

『え？どこに…』

「ん？俺んち」

え？

何を言い出しているんだろうこの人は。

アイドルだよね？

知らない子家に上げて大丈夫？

「はい、ほらレッツゴー！」

と私の自転車を押し始める。

ため息を吐き出し

その後ろを素直に付いていくことにした。

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