私は泉鏡花【文豪ストレイドッグス】

ちょっとした日常【番外編】 ページ12

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「だんだん暖かくなっているのう…ほれもう梅の花がちらほらと…。」


『本当ですね、でもまだ寒いのは変わりませんよ。』




私は紅葉様に羽織ものを着せて少し後ろを歩いた。大きな背中はこんなにも近いのに何故か遠くに感じる。



仕事終わりの紅葉様は機嫌がよく疲労の色なども見せず美しい園庭の庭を見つめている。


仕事といっても会食だったそうで私は別室でずっと待機していたが楽しそうな声がちらほら聞こえていた。


「ずっと部屋で待たされさぞ退屈であったじゃろう…A、済まぬのう。」



後ろを歩いていた私の肩を抱き私は間近で紅葉様の品の良いお香の香りを感じた。

嬉しくてニヤけそうになるのを抑える。





＿＿＿＿寂しかったけど、いいんです。


紅葉様は危なくない仕事以外は私を必ず連れてゆく。私はそれが嬉しくてたとえ何時間待たされても辛いだなんて思わなかった。




『いえ、紅葉様から頂いた本を読んでいたのであっという間でした。』


「…それなら良かった。またいい本があれば買ってきてやろう。」



次はどんな物語がいい？楽しそうに話す紅葉様に私はつられて笑った。



不思議だ。紅葉様のご様子でこんなにも私の心は代わる代わる違う思いになってゆく。



紅葉様も私と同じ気持ちであって欲しいな。

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