偽者の花嫁 【中原中也】

８話 ページ9

『…何者ですか？』







中原さんはマフィアの人





中原さんの名前を知ってる人は






少なくともそういうことに関わっていた人なのは分かった。







「おー、こわいこわい。




自己紹介遅れたね、私は太宰 治


武装探偵社で働く者さ」






『そうですか』









武装探偵社







お父さんもその人達から隠れるように仕事をしていたから聞いたことがあった。







「そのチョーカー中也のだよね？





奥さんは冗談で言ったけどまさか当たってたとわねぇ…」







クスクスと微笑を零す太宰さんに怒りを覚えた。









『…そうです。それでなにか私にようですか』








急いでいるので、と付け加えてキッと睨んだ。



危ない人だと私は思っていた。









「用はないけど、楽しそうに選んでいたからつい話しかけてしまっただけさ。



お名前お伺いしてもよろしいですか？」









『…A…です。』









「Aちゃんね、それじゃぁまた。








＿＿＿＿＿＿お幸せに。」









太宰さんはニコニコとそう言いながら出ていった。









お幸せに…か









『無理だよ…、この結婚に









＿＿＿＿＿＿＿＿＿愛なんかない。』









ぎゅっと唇をかんで目を閉じた。









結局、私はスーパーから出たあとそのまま帰った。






本屋さんに寄りたかったけど気分ではなかった。






お肉があるから…傷まないうちに帰らないと。








人混みを避けタクシーで帰った。







タクシーがお父さんの会社の前を通った時






やけにビルがいつもより大きく見えた。

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