普通のお兄さん3

145.眠れぬ夜 ページ45

　
　
はぁ……。
結局全然眠れない。
　
　
「私が出来ない時は他の誰かの所に行くの？」


こんな事しないって分かってる。
なんでこんな事言っちゃったんだろう。
結弦くんの事信じてないみたいじゃない。

でも結弦くんを私が独り占め出来てる事が、未だに信じられない。
他に行く場所があったって不思議じゃない。
それだけの魅力のある人だもん。
不安にもなるよ。


『明日はまだ出来ないですけど良いんですか？』

　
最低な事言っちゃった……。
結弦くんを余計に追い詰めるような事。


いっぱいごめんって言ってくれてた。
人間だもん、間違いはあるよね。
それを素直に謝ってくれてる。
だったら許すべきだよね。

なんで許してあげられなかったんだろう。





『なんだよ！ こんなに謝ってんのに。
　もういいよ。Aなんて。じゃあな！』


……待って。行かないで。


『謝っても許してもらえなかったら
　どうすりゃ良いんだよ。
　俺には他に支えてくれる人がいっぱいいる。
　そっちに行けって事だろ。』


違う。行かないで。
許す。もう許してるの、とっくに。


誰？
結弦くんを連れて行かないで。
そんなに楽しそうにハグしているのを、
肩組んでるのを見たくない。
頭をポンポンするのはやめて。
私だけにしてよ。
他の誰かにやらないでよ……。


お願い……。
行かないで。






……夢？
あぁ。いつの間に寝てたんだろ。
夢で良かった……。涙を拭う。



結弦くんが居なくなるなんて
耐えられないよ……。
だったらもう許してあげなくちゃ。

都合よく違う人の所に行く？
そんな事する人じゃないよ。
そんなの分かってる。


結弦くんを支える人はたくさんいる。
だから不安にはなる。
でも最初に結弦くんが言ってくれた。
俺はそういう存在だから不安にさせる
けどそれでも支えて欲しいって。


ってか、元々はそんな大きな話じゃない。
したいのに耐えられないって話でしょ？
他に行く場所があるなら
そんな事正直に言わないでしょ。
勝手に自分でどんどん不安を募らせてただけだよ。
ネガティブにあれこれ考えすぎるのは私の悪いクセ。


うん。大丈夫。
ちゃんと顔見て話さなくちゃ。
　
　

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