No.82 ページ33
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「Aは大丈夫だったか？」
何度目かの風が吹いて、轟くんは私を視界に入れた。大丈夫だったかというのはきっと、私の個性の事だろう。
『うん、暴走はしなかったよ。でも…』
「でも？」
『やっぱり何も出来ないのは辛かった。けどね、心操くんが言ってくれたの』
"信じるだけでも良い"
心操くんが言ってくれたことを轟くんにも伝えてみた。すると彼は目をまんまるにして、ボソリと呟く。
「なんで心操…？」
『あぁ、たまたま会ってね、励ましてもらった。
あと一人じゃ不安だろって一緒に出掛けたよ』
そしてたくさんの猫を撫でたことや、心操くんと個性が似ていると話をしたことを話す。
だけど、気付けば轟くんの表情は曇っていて、どうしたんだろうと首を傾げた。
『轟くん？どうしたの？』
「……いや、何でもねぇ」
そうは言うけれど、どう見たって何でもなさそうに見えない。何か気に障るようなことでもしてしまっただろうか。
『でも…。私、なんかした？』
「だから何でもねぇってっ……悪ぃ」
『…ううん、私こそごめん』
珍しく少し声を荒げる轟くん。初めてのそれに私も怯んでしまう。でも今のは多分私が悪いのだろう。きっと彼の領域に踏み入りすぎてしまったのだ。
『ほら、疲れたでしょ？早く帰って休みなよ』
「あぁ、そうする。わざわざありがとな」
最後はうっすらと笑みを浮かべてはくれたけれど、何となく気まずい空気のまま、別れることになってしまったのだった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年7月12日 14時
