No.05 ページ5
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「ぼ、僕、緑谷出久です！ヒーロー科で、えっと、」
やっとの思いでカーテンを開けて身をさらすと、顔を真っ赤にさせて自己紹介を始める男の子。そんなに緊張するなら言わなかったらいいのに、と内心思いつつ足早に保健室を出る。
私はあの時、絶対ヒーロー科には近づかないと改めて決心した。
だってヒーローは人々を助ける存在。そしてヒーロー科はその存在を目指している生き物。
だから朝の紅白髪の人だって普通なら知らない人に話しかけないのにわざわざ話しかけるし、緑谷っていう人も自己紹介なんてし始めるのだ。
私は助けなんて求めていないし、信じてすらいない。もう人と関わるのなんてごめんだ。
「今日の授業はここまでー。ちゃんと復習しろよー」
気付けば授業があっという間に終わっていて、しかもそれが最後の授業だったから皆帰り支度を始める。
そしてどこに遊びに行く？なんていう会話を遠くで聞きながら私は鞄を持って教室を出た。
あの散々な入学式の次の日、クラスは既にグループが出来ていた。といっても、友達なんて作る気すらないからあまり関係ないのだけれど。
でも入学式で変に目立ってしまったせいか、大丈夫だった？とか話長かったよねーと話しかけてくる女の子がいて苦笑いを浮かべるしかなく。
何とかその数日をやり過ごして、私はひとりになることが出来た。
『シロー、遊びに来たよー』
「みゃあー」
だけど寂しくなんてない。だって私には入学式の時に出会った猫、シロがいるから。
シロは私を裏切ったりしない。私の唯一の友達。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
