No.38 ページ38
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「どうしたんだい？こんなところに一人で。もうすぐパーティー始まっちゃうよ？」
バルコニーの柵に両腕を置いて、そこに顔を突っ伏していると若い男の声が耳に届いた。
振り返ると心配そうな表情を浮かべる男がいて、多分イケメンという類に入るんだろうと呑気に考える自分がいたりして。
『その、人酔いしちゃって…』
「え、大丈夫？水とか持ってこようか？」
『大丈夫です、そのうち治るんで』
断りを入れてまた外に目を向けると、男は私の横に来て柵に寄りかかる。だけど全く目線を合わさない私に、男は笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「じゃあ少しの間話し相手になってくれないか？俺もああいう場所はあまり好かないんだ」
『へぇ、あなたみたいな人でもそういうのあるんですね』
「やだなぁ、誰だって苦手とかあるさ。それより、俺は神崎唯也。君は？」
その名前に私はピクリと反応する。まさかこの優しそうな人がターゲットだったなんて。
探す手間が省けたと思ったと同時に、何故こんなにも早く出会ってしまったのかと気分が重くなる。
『感宮……A』
「驚いた。君が感宮財閥のお嬢様だったとはね。じゃあ今回がパーティーに出るの初めてだよね？
だって誰も君の姿を見たことがないって密かに話題になってたんだから」
そう言って私の髪をすくう神崎に、必死に抑えていた個性が解き放たれていく。
すると神崎の心の声が私の中へと流れ込んでいき、まるで身体が金縛りにあったようになってしまった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
