No.23 ページ23
.
轟くんと私が着いた先は、心地良い風が吹く屋上だった。そこの解放感に、私の心はやっと落ち着きを取り戻していく。
『はぁー何であのクラスは、ああもフレンドリーなの？パーソナルスペースないのかな』
「ふっ…でも感宮、だいぶ丸くなってると思うぞ」
『は？そんなわけないじゃん。百歩譲って轟くんの前だけだから』
「それはありがてぇな」
クスッと笑う轟くんの表情はあまり見ないからレアものだと思う。一体、クラスでの轟くんはどんな様子なのか少しばかり気になったのは嘘ではない。
「で、なんか用事があったんじゃないのか？」
『あ、うん。これ、返そうと思って』
「あぁ、ジャージか。ありがとな」
紙袋ごと受け取った轟くんは、中身のジャージをじっと見つめ出す。何か気に食わないことがあったのではないかと不安になった。
「思ったんだが、感宮って良い匂いするよな」
『は、はぁ！？ば、馬鹿じゃないの？！』
「いや、本気だ」
真顔で返事をする轟くんに、私は何も言い返せなくて恥ずかしさで埋もれてしまいそうだ。
でも勝手に洗濯されて最悪だとか、そんな反応じゃなかっただけでも全然マシだ。やっぱり轟くんを少しだけ信用していいのかもしれない。…少しだけ。
「なぁ、感宮。明日から朝、一緒に学校行かねぇか？」
『どうしたの、急に』
「特に理由はねぇけど…何となく」
ぽりぽりと人差し指で頬を掻く轟くんは、そっぽを向いてどことなく恥ずかしそうに見えた。
そんな姿が微笑ましく思ってしまって、「いいよ」と笑って返事をする。
「感宮の笑った顔初めて見た。いいと思う」
その言葉に私の顔がまた赤く染まっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
