No.03 ページ3
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「こいつ、人懐っこいんだな」
紅白髪にオッドアイ、左目周りの火傷の痕。
そんな彼は遅刻すると言っていたクセに、しゃがみ込んで猫を撫でていた。
猫はその撫で方が気に入ったのか、お腹を見せて満足気な顔をしている。正直、私より懐いているから嫉妬でムッとしたけれど今はそれどころじゃない。
猫ちゃんごめんね、その人を引き止めといてね。
そう心の中で呟いた私は、鞄をギュッと掴み全速力でそこから逃げ出した。呼び止める声なんて知らない。私は一刻も早く解放されたいのだ。
そう、強く望んでいたはずなのに…。
「今日から君たちは雄英の一員です。これからは…」
なんで私は、家ではなく学校に走ったんだろう。家の方が安全だと身に染みる程感じていたはずなのに、何故か私はネズミみたいな校長先生の長い長い話を聞いている。
ふと周りを見てみると、沢山の人、人、人。一瞬でも気を抜いてしまうと心の声が大量に聞こえてきそうで恐怖で身震いをした。
だけど、先程の彼の姿は見当たらない。あんな特徴的な髪をしているなら、きっとすぐ見つけてしまうはずなのに。
もしかしたら入学式に参加していないヒーロー科の中にいるのだろうか。なら、尚更ヒーロー科には今後近づかないようにしよう。
そう心に誓い、気合いで入学式を乗り越えた…はずだった。
(あーあ、校長の話長いからマジでぶっ倒れた)
(大丈夫かな？あの子)
(かわいそー。あんな注目の的になりたくないわ)
どうやら突然沢山の人の中にいるには荒療治すぎたみたいで、ぐるぐると回る頭の中に、心の声が容赦なく降り注いだ。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
