No.19 ページ19
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止めないといけない、そう強く感じたけれど口は動きを止めてくれなくて、今まで我慢していたモノが溢れ出ていくのが分かった。
『私の個性はっ、他人の心の声が聞こえるの！触れるとその人の過去が視える！！自分の意思と関係なくともね！
分かる！？私の気持ちっ…。どんどん人が離れていくの…両親でさえ、私を置いていくの…！』
「感宮…」
『でも動物の声なら聞こえない。だからっ…だから、シロといるのが楽しくてっ離れたくなくなるの…！
別に、誰が言い寄ってきてもいい。どうせ私に触れた途端、恥ずかしい過去を見られて逃げていくんだからっ』
あれ、なんで涙なんかが出ているんだろう。なんで止まらないんだろう。嗚咽だけが部屋の中に響き渡っていく。
やだ、こんなところ見られたくない。私は一人でも平気なのに、これだと弱い人間みたいじゃないか。
うずくまって必死に顔を隠していると、轟くんは無言で立ち去る。
そうだ、どうせ離れていくのだから別にもうどうだっていい。最初から分かっていたことなのだから。
それなのに、胸は張り裂けそうに痛くて、私はまだ離れられることに慣れていないのだと痛感すると同時に嫌になった。
『うぅ〜…っ！』
「我慢はよくねぇぞ」
その声が聞こえた途端、私の目の前に影が差し掛かった。ハッとした私は顔を持ち上げる。するとそこには帰ったと思った轟くんがしゃがんでいた。
『帰ったんじゃ…なかった、の？』
「んなわけねぇだろ。ほら髪乾かしてやるからソファの下座れ。怖いなら触らないし、ドライヤーの音デカいから泣いてもバレねぇぞ」
あぁ、きっと今の私は、酷くみっともない顔をしているんだろうな。
でも、この時は、轟くんのフォローと言い難いそれが居心地良く感じてしまったのだった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
