No.12 ページ12
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広がっていく波紋のような感覚。辺りが一気に静かになり、緑谷の心の声に近づいていくのが分かる。
(大丈夫かな…早く保健室に連れて行ってあげないと。あ、でも勝手に体が動いて話しかけちゃったけど、僕のこと覚えてるかな？
もし覚えてないなら急に話しかけられて困ってるよね…。
いやでも！それよりも大事なのは体調だ！早く安心出来るように…)
『ぶつぶつうるさっ…！』
「へ？」
『あ。』
思わず声を上げてしまったが、緑谷は見た目以上に頭の中で細かく分析というか考えるタイプだったらしく、拍子抜けする。
本当にこの人、私を助けることしか考えてない…。
ポカンとしていると、突然の私の発言に間抜けな顔をしていた緑谷は戸惑いを見せる。
そのおかげでというのは腑に落ちないけれど、他の心の声が聞こえなくなり、やっと落ち着きを取り戻していった。
「えと、とりあえず肩貸すよ。立てる？」
『え、ちょっ…まっ…』
ストップ、という言葉は声になることはなく、緑谷は私の肩に大きな手を触れさせてきた。
それと同時に、幼少期の緑谷の姿や大人の姿が視えてくる。
"諦めた方がいいね"
"僕も、なれるかな…？"
"ごめんね、出久…！"
"君はヒーローになれる"
「っ……！？」
『あなた、無個性なの…？』
それは無個性と言われ、ショックを受ける緑谷の姿。だけど、最後に視えたのはヒョロヒョロな男に「ヒーローになれる」と言われ泣き崩れる瞬間だった。
そういえば、ヒーロー科と言っていたけれど、どうやって無個性なのに合格をしたんだろう。
疑問の目で見ていると、緑谷は手をバタバタ動かしながら理由を話してくれた。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
