No.35 ページ35
.
次の日の朝、私は何となく轟くんと顔が合わせづらくて保須事件の後に教えてもらった連絡先で先に登校してもらうように依頼していた。
一人で歩く朝の時間帯は静かで、気持ちを穏やかにさせる。
『おはよ、シロ』
「みゃあー」
『今日はちょっと急いでるから、もう行くね』
「みゃーみゃー」
心なしかいつもより鳴いているシロに後ろ髪を引かれつつ、私は学校に向かう。すると学校付近で聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あ、おはよ！感宮さん！」
「感宮くん今日は遅いんだな」
「えーと、確か轟くんの！」
振り返ると緑谷と飯田くん、そして茶髪の女子。
二人に挨拶を返しながら、女子を見て首を傾げるとその子は笑顔を見せながら自己紹介をしてくれた。
「私、麗日お茶子！確か、感宮さんだよね？よろしく！」
パッと手を差し出す彼女に私が戸惑うと、緑谷が気を利かせてくれて、何とか握手を免れることが出来た。
「あーごめんな？私的には別に見られてもいいんやけど、感宮さんにとっては気分良くないもんな」
『ううん、私こそごめんね。よろしく、麗日さん』
私の個性を知っても全く怯むことなく、笑顔のまま接してくれる。こんな人ともっと早く出会えばなんて思ってしまったのは秘密だ。
だけど、さすがはヒーロー科。珍しく轟くんと登校していないことを疑問に持たれ、寝坊したからと嘘をつけば「会えなくて寂しいやろ？」と何故かA組に連行される始末。
渋々、A組の中に目を向けると今は見たくなかった光景が視界に飛び込んでくる。
「轟さん、この問題なのですが…」
「あぁ、これは…」
目を逸らすと気まずそうな顔をした緑谷たち三人がいて、何故そんな顔をするのと疑問を抱く。
『ごめん、取り込み中みたいだから教室戻るね』
「あ、うん。またね…」
その顔はまるで、私の醜い嫉妬を汲み取ったかのようだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
