剣持さんと中間試験後 ページ9
中間試験が終わった。
成績の紙を貰って喜ぶ者もいれば、だめだったと肩を落とす者もいた。
一方、私はというと────。
「……」
「A……」
結果は285点。剣持さんが私に課した300点には、ほんの少しだけ及ばなかった。
もちろん勉強はした。それはそれは、「あんなに必死になって勉強する娘は初めて見た」と母が言うくらい。
それでも及ばなかったということは、私の勉強方法が悪かったか、あるいは問題をすらすら解けるほど私の頭がよくなかったか。
どちらにせよ剣持さんには報告する他あるまい。心配そうにこちらを見る友人には気づかず、大きなため息をつきながら、私は約束の場所へと向かった。
そよそよと木々が揺れている。
それをぼんやり見上げながらまたため息をついた。
中庭の桜の木の下、剣持さんと約束した場所だ。
剣持さんとの約束の時間は17時。16時半にはもうここにいた。ホームルームが早く終わったのだ。
剣持さんは部活のミーティングの後ここに来るらしい。ふと時計を見ると16時50分を指していた。
「すみません、遅くなりました」
もうすぐかなとそわそわしていると剣持さんが走ってこちらにやってきた。いつもなら「走る剣持さんもかっこいい！」なんて目をハートにしているところだが、今回ばかりはそうもいかなかった。
剣持さんが私の前に立つ。そっと剣持さんに紙を差し出した。
「……剣持さん、わたし、」
ぎりぎり届かなかった。
か細い声が、静寂の中小さく響いた。
暫く紙を目で追い読んでいた剣持さんが顔を上げる。
「……貴女に課題を課したのっていつでしたっけ」
「……十日、前です」
「正確すぎて怖いなオイ」
剣持さんが私に向かって手を伸ばす。あ、デジャヴ。
そのまま頭まで伸びてきた手は、ゆっくりと私の頭を撫でた。
「けんもち、さん、」
「ご褒美のためとはいえ、頑張ってたのは僕が一番知ってますから」
顔を上げれば、目を細めて私を見つめる剣持さんの姿。その目はまるで「愛おしい」なんて感情が浮かんでいるようで。
「っ、うー……」
ぼろぼろと堰を切ったように涙が溢れる。泣いているのに悲しくはなくて、不思議とこころがぽかぽか温かい。
けど泣き顔は見られたくなくて、ごしごしと目を擦る。
「目、擦ると腫れますよ」
擦っていた私の手をそっと退けて、まだ止まらない私の涙をそっと拭う剣持さん。
ああ、好きだなあ。なんて、再度私は確認するように思うのだった。
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あるる(プロフ) - 更新まってます。 (4月12日 20時) (
レス) @page18 id: b279daaf7c (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃ - 更新待ってます！！ (2022年9月4日 16時) (レス) @page18 id: 0eb8ab871d (このIDを非表示/違反報告)
ちゃー！ - 最高です (2022年4月4日 23時) (レス) @page18 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
消炭(プロフ) - 燐さん» ありがとうございます〜〜！！更新頑張ります！！！ (2022年3月24日 11時) (レス) id: 3142803129 (このIDを非表示/違反報告)
燐 - ワーーーーーーーーッッッッッッッめっちゃ好きですありがとうございます！！！！！！！！！！ 更新頑張ってください！！！！ (2022年3月23日 16時) (レス) @page18 id: d09a152a0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：消炭 | 作成日時：2021年11月25日 12時
