Free.35 ページ38
日和 Side
何も言えなかった。僕は郁弥のために、何が出来るのだろう。
あの時、郁弥から声をかけてもらって運命だと思った。そういうのを信じている訳では無いけど、また会えるなんて思ってなかったしまたいつ会えなくなるか分からないから声をかけた。そのまま仲良くなれてすごく嬉しかった。
その後僕ら二人ともAのことが気になって声をかけて、三人でいるようになった。
郁弥が酸欠事故を起こし入院した時、助けたのは僕だったのに、何故か僕が助けたような気がしなかった。そして、郁弥に僕が助けたことを認識させてはいけないと思った。だから夏也くんが来たらいつもすぐに帰っていた。
いつだって王子は気づかない。
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今日Aは休んだから僕ら二人で帰っている。
「見て、いいカフェ見つけたんだ。」
この前行ったカフェで撮ったドリンクを見せる。
郁「綺麗な色」
「帰りに行こうよ。」
郁「…ごめん、今日はそんな気分じゃない。」
「そっか。じゃあまた郁弥の気が向いた時にでも。」
申し訳なさそうにそっぽを向かれた。なんだか気まづいな。
「…人魚姫ってさ、最後は泡になっちゃうんだっけ」
「郁弥が昔好きって言ってた。僕、実はあまり好きじゃないんだ。
人魚姫はいつだって王子のそばにいたのに。」
郁「どうしたの」
最後のは聞こえてなかったようで、突然そんなことを言い出した僕のことを不思議そうに尋ねた。
「ううん、なんでもない。」
自分の傷も誤魔化すように、笑って答えた。
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さく(プロフ) - はるかぜ。さん» ありがとうございます! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 3f7d8ab273 (このIDを非表示/違反報告)
はるかぜ。(プロフ) - 読みやすくて、どんどん読めました。更新されていて嬉しいです!続きも楽しみにしてます! (2022年1月27日 21時) (レス) @page10 id: 164040e2af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さく | 作成日時:2022年1月26日 22時