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82話 ページ34

『誕生日、おめでとう…』

義勇さんがいなくなった瞬間がわかった。

わたしは手を握り続けていた。離せない。

涙が止まらなかった。

覚悟は決めていた。だがそれでも耐えられないほどの喪失感がわたしに降りかかってくる。


気がつけば日が出ており、鱗滝さんが来ていた。

「A、いかしてやれ。」

そう言ってわたしから義勇さんの手を離す。
鱗滝さんの声は震えていた。
義勇さんはとても穏やかな表情で眠っていた。


そうして、義勇さんは気がつけばお墓に入っていた。
大体のことは鱗滝さんがやってくれた。


寛三郎さんは義勇さんが亡くなった後、すぐに亡くなった。
随分高齢だったようだし、ここまで生きれてたのが奇跡のようなものだ。
きっと、ご主人が寿命を全うするまで安心できなかったのだろう。


わたしはもう、何もする気が起きなかった。

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作者名: | 作成日時:2022年3月13日 15時

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