81話 ページ33
鬼舞辻無惨を倒してから、4年がたった。
不死川実弥は、25歳の誕生日に亡くなった。
不死川さんは義勇さんが看取った。
「不死川は幸せそうだった。」
と義勇さんが言っていた。そのときの何とも言い表せない表情はよく覚えている。
そして、今日は2月7日。明日はついに義勇さんの25歳の誕生日だ。
義勇さんは一ヶ月ほど前から段々と衰弱していっている。
最近はほとんどの時間を布団の中で過ごしている。
わたしはずっとその横に座り、他愛のない会話していた。
「いよいよ、今日で最後か…。もう悔いはないと言えるくらい楽しませてもらった。」
一ヶ月前からこの家には沢山の仲間が訪れていた。炭治郎くんに禰󠄀豆子ちゃん、鱗滝さん、宇髄さんに村田さん…他にも沢山の人が来ていた。
「こんな穏やかな最期を迎えられるなんて、俺は幸せ者だ。」
義勇さんが微笑む。なんて切ないのだろう。
『…とても寂しいです。』
義勇さんの眉が少し下がる。
義勇さんがわたしに羽織を渡す。義勇さんが鬼殺隊時代いつも身に付けていたものだ。
「お前が持っていてくれ。やっぱりこういうものがあると多少心が安らぐものだ。俺にはもう必要ないものだしな…。」
義勇さんが頭を撫でてくれる。
『義勇さん…。』
「無理に笑わなくてもいい。自分の死をこんなにも悲しんでくれる人がいるというのも案外嬉しいものだ。」
ダメだ。出来れば明るい最期にしてあげたい。泣いたらダメだ。
『義勇さん、本当にありがとうございました。わたしはあなたに出会えて幸せです。義勇さんはわたしに色々なものを与えてくれた。あなたに会うために生まれてきた、そう思えるくらい、幸せです。』
義勇さんとの思い出を振り返り、自然と微笑みが生まれる。
それを見て、義勇さんは安心したような顔をした。
「それは良かった。俺もAと過ごした日々はとても楽しかった。幸福だ。」
そういって笑いかけてくれる。そろそろ時間だ。
『おやすみなさい。』
「あぁ、おやすみ。」
そう言って義勇さんは目を瞑る。その手は震えていた。わたしはそっと手を握る。少しでも安心していけるように。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2022年3月13日 15時