80話(無惨討伐後) ページ32
続きー
「そもそも俺たちのとこには鴉がいるから金魚飼えねェだろ。」
『確かに…!』
「いや、寛三郎は金魚を食べたりしないぞ!」
『確かに…!』
その後は、リンゴ飴を食べたり、射的をしたり、お面を買ったりして遊んだ。
「お面、懐かしいな。最終選抜の時に鱗滝さんに貰った時以来だ。」
『お守りですか?いいですね。』
「あぁ、鱗滝さんの弟子はみんなつけて臨んだ。」
義勇さんは昔を懐かしむようにして話す。自分から最終選抜の事を話せるようになるなんてなぁ。
「おっ、そろそろ花火が上がるんじゃねェか?」
『初めて見ます。』
「俺もだ。」
「俺も。」
みんな初めてだった。
空の下の方から光が昇ってきて、花開く。そしてすごいでっかい音が鳴った。
「うおっ。」
「うぁ。」
『ひっ』
3人でビビりまくった。
義勇さんの浴衣を掴む。義勇さんは不死川さんの浴衣を掴む。不死川さんは行き場をなくした手をわたわたしていた。
「お、おい!くっつくなやァ!」
「な、なんだこの音、すごいでかい。」
2人が少し焦ったような会話をしている。
自分より焦っている人を見ると、案外落ち着くものだ。
2人をなだめて、川の近くの芝生に腰掛ける。
「慣れるもんだなァ。」
「そうだな。全然怖くない。」
さっきまでの焦りが嘘のようだ。2人ともすごい澄んだ顔をしている。
なんだか愛おしくて笑ってしまう。
「なァに笑ってんだよ。おい、冨岡ァお前しつけがなってないんじゃねェか?」
「なんだ。笑顔なのはいい事だ。」
『ふふっごめんなさい。楽しくて。』
「別にいいけどよォー。」
不死川さんは意外と優しい人だ。
「綺麗だな。」
「そうだなァ。」
『ですね。』
3人で静かに花火を見つめる。
きっと花火はそろそろ終わってしまう。
「またこれるといいな。」
不死川さんがぼそっと呟く。
「あぁ、来よう。次は宇髄や炭治郎たちも連れてこよう。」
「いいなァ。」
こんなとりとめのない会話がいつまでも続くことを、わたしはこの2人を見て願わざるを得なかった。
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作者名:咲 | 作成日時:2022年3月13日 15時