77話(無惨討伐後) ページ29
続きー
「抱いてみるか?」
「で、出来るだろうか。」
「大丈夫だって、」
そう言って義勇さんに赤ちゃんを渡そうとする。
「ま、待て、どうやればいい?こんな小さい赤ちゃんは触った事がない!」
義勇さんが珍しく焦っている。やっぱり最近表情がわかりやすくなってきた気がする。
「そーだな。初めてで片腕は厳しいか?Aと一緒に抱いてやれよ。」
突然こちらに振られてびっくりする。赤ちゃんなんて触った事がない。力加減が分からない。潰しちゃったらどうしよう。
「A、一緒にやってみないか?」
『…は、はい!』
宇髄さんがそっとわたしたちに赤ちゃんを渡す。
優しく受け止めると、柔らかくて繊細で、それでいて生命の強さを感じた。これが新しい命か。
隣で義勇さんが嬉しそうに赤ちゃんを見ている。
『良かったですね。』
「あぁ、すごいな…!」
しばらく赤ちゃんと遊んで、宇髄さんに返す。
「あっ、そうだ。出産おめでとう。」
そう言って義勇さんが出産祝いのプレゼントを渡す。
「おぉ…!ご丁寧にサンキュ!」
宇髄さんが受け取る。
「おぉ〜!派手に可愛い着物だな!きっと似合うぜ!」
喜んでもらえたようで良かった。
「この子も数年後には派手派手だ〜とか言い出すのだろうか…。」
『人のことを派手か地味かで判断するようになっちゃうのでしょうか…。』
2人で赤ちゃんを眺めしみじみとする。
「おい!お前ら俺をなんだと思ってるんだ!!…まあこの子もきっと俺に似て、派手に成長するだろうな!!」
2人でしゅんとする。
「おい!!嫌そうな顔をするな!!」
「ははっ悪い。冗談だ。」
『ふふっごめんなさい。』
そうして笑い合う。
「ふっ、お前らが冗談を言えるようになってくれて、俺も派手に嬉しいよっ。」
そう言ってまた頭をわしゃわしゃされる。
みんなで笑い合えることがこんなにも幸せなのだ。なによりも尊い。
そして新たな命と出会った。失う事しか無かったわたしたちに新しい命と触れ合う事が出来るようになるなんて、とても嬉しい。
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作者名:咲 | 作成日時:2022年3月13日 15時