21話 ページ22
数日が経った。
炭治郎たちは、機能回復訓練を始めたらしい。
わたしと善逸くんはまだである。
今日は鎹鴉をお風呂に入れようと思う。
日陰に桶をおいて、鴉を洗う。
気持ちよさそうな顔をしている。
ごしごし泡立てて洗うと、空にしゃぼん玉が舞った。
今日は天気が良い。日向は暖かくて心地良さそうだ。
この子もあっちでお風呂に入った方が気持ち良いだろうな。
日を浴びて、きらきらとしゃぼん玉が輝いている。
わたしはそのしゃぼん玉に少し短くなった手を伸ばす。
ここからでは届かない。思わずしゃぼん玉を追いかけてしまう。
日の光が熱い。でも少し痛いぐらい。あまり気にならない。
わたしの手に当たり、しゃぼん玉が弾ける。
その時、わたしは誰かに日陰の方は引っ張られた。
「おい。あまりそっちへ行くな。」
義勇さんだった。来てくれていたのか。
「まだ完全に治っていない。安静にしておいた方がいい。」
心配してくれていたのか。少し嬉しくなる。
『ごめんなさい。』
「お風呂に入れてあげていたのか。」
『そうです。』
その時、義勇さんの鎹鴉が飛んで来た。
義勇さんは少し考えた後、
「こいつも入れてやってくれないか?」
と言った。
『もちろんです。』
それを聞いて、義勇さんの鎹鴉がわたしの手に飛んで来た。
「俺は少し胡蝶のところに行ってくる。よろしく頼む。」
『わかりました。』
義勇さんの鴉をお風呂に入れる。
わたしの子はもうお風呂から出て、体を震わせ水を飛ばしている。
義勇さんの鴉はおじいちゃんカラスだ。
ゆったりしている感じが義勇さんにあってて、わたしはこの子が好きだ。
優しく洗ってあげると、気持ちよさそな顔をしてかわいい。
もちろん、わたしの相棒もかわいい。
『義勇さんをよろしくね。』
そんな言葉が自然に出てきた。
出会った頃は人間なんてと、心のどこかに思っていた。今ではこんな言葉が出てくるほど、思い入れの深い存在になっている。
わたしもずいぶんと愚かになったものだな。
でもそんなに悪くない気分だ。
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作者名:咲 | 作成日時:2022年3月6日 21時