18話 ページ19
その日の夜、夢を見た。
お父さんとお母さんの夢。
そして村の人もいる。
お父さんとお母さんが言ってくる。
「幸せそうだな。」
「幸せそうだね。」
その目はとても冷たかった。
「わたしたちは死んだのに。」
「お前はいいな。」
なんでそんなこと言うの?そんな目でみないで。
「鬼の子のくせに。」
「お前は人間じゃない。なんでここにいるんだ。」
「怖い!あっちいって!!」
「こら!見ちゃダメ!食べられちゃうわよ。」
村の人たちがそうわたしに言ってくる。これはいつも通りだ。久しく忘れていた。
そうだ。お父さんたちが死んだのに、自分だけ幸せに生きるなんておかしいよね。でも、そんな顔でわたしを見ないでよ…。なんでそんなこと…!
そこで目が覚めた。
呼吸がしづらい。
「大丈夫か?」
義勇さんだ。なんでここに。
でもなぜか顔を見ると安心する。
「どこか痛いのか?」
『いえ…少し悪い夢を見て、』
「そうか。」
『わたしは、幸せになってもいいのでしょうか。』
「なんでだ?」
『夢で、両親に、自分たちは死んだのにお前はいいなって…』
「お前の両親はそんなことを言わないはずだ。俺はお前の両親のことを知らないが、家族っていうのはそういうものだ。」
「お前は今幸せか?」
『幸せです。』
義勇さんは幸せではないのかもしれない。鬼に憎悪を抱いているはずだ。わたしも例外ではないだろう。
そんな彼にこんなことを言ってもいいのだろうか。
わたしは彼のおかげで幸せになれた。
彼はわたしでは幸せになれないだろう。
義勇さんも何かを奪われて鬼殺隊に入ったのだろう。
彼のそばにいてもいいのだろうか。
「幸せなら、よかった。」
そう言って義勇さんは笑った。
わたしの幸せを喜んでくれるのか。
『義勇さんは、わたしが憎くないのですか?』
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作者名:咲 | 作成日時:2022年3月6日 21時