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『……好き。』
出会って数ヶ月……ほんと長かった。
頑張ったでしょ俺まじで。泣いた
やっと俺のものになった
その彼女との日が、今までの俺の中で一番幸せだったと思う。
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彼女と正式に付き合うようになってから
俺の生活は彼女中心の生活へと変わった。
とにかくまずは同じ大学に行けるように受験勉強をそれはもう死ぬ気で頑張って。
順調だった。
少しずつ増えていく2人の時間、
その中で知れるお互いのいろんな一面に嬉しくなって。
顕嵐、って俺を呼ぶ声が好きで
あかり、そう呼べば振り向く嬉しそうな顔が好きで
バイト終わりの珈琲の混じった独特な香りも
普段の彼女自身の甘い匂いも、全部好き
宣言された通り意外にも素直な彼女に素顔が砕けるのは早いもので、好きは積もる一方だし
確実に縮みはじめる心の距離は、むず痒くも心地よかったし。
何より好きな人がそばにいてくれるって、こんなにも嬉しい事はない。
今までだって勝手に会いに行ってそばにいたっちゃいたけど
同じ気持ちって当たり前だけどやっぱり全然違った。
「ねぇ今日さ、俺ん家きてよ」
『ぇ、いいの？いく！！』
初めて彼女を家に呼んだ日は大学も通い始めてしばらく経ってから。
これまでは外でデートとか
家には家族がいる事を理由に、一人暮らしの彼女の家に行くことが多かった。
それをわかってて呼んだのは
もしばったり家族に会えば、彼女だともう紹介するつもりでいたから。
『楽しみだなー。変なものとか無いよね？』
「あかりが探らなければ無いよ？笑」
『…ちょっとは否定したらどうなのよ。』
「はは、嘘だって。俺今飢えてないし充分だし」
『……もぉ』
「照れてるー」
初めて俺の家にわかりやすく楽しみにしてくれてる彼女と
砕けたこんな会話で笑ってぶつかり合いながら歩いて。
「もうすぐだよ」
『……』
変だなって思ったのは多分ここから。
「どした？」
『…ね、顕嵐のお兄さんって』
嫌な予感がしたのは、ここから。
『ね、やっぱ今日は私の家行こ？』
「なんで、ここまで来たのに？」
家のすぐ手前まで来て俺の手を掴んだ彼女に振り向けば、
その視界の奥で帰ってきた兄貴が歩いてくるのが見えて。
兄「ぉ、顕嵐、……………あかり…」
確かに彼女の名前を読んだ兄貴の声が耳に届いて。
嫌な予感が俺の中を鈍い音を立てて渦巻き始めたのは、ここから。
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作者名：さく。
| 作成日時：2017年7月19日 20時
