恥ずかしいぐらいに、僕は君に。sho.aran 4 (ページ11)

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＿＿忘れられないって怖いものなんだと俺は知った。

兄貴と鉢合わせになったその日を境に、
相変わらず俺の事を好きだと言う彼女からは

少しずつボロが出て
少しずつ溝ができて
少しずつ息苦しくなって

俺の存在が彼女の中の兄貴を大きくさせてる
そんなあまりにも残酷な現実がそばにあって。

本当にあっという間。

彼女の心の見る先に居るのはもう明らかに俺じゃなかった。
呆気なく俺たちの思いの分量が見あうことは無くなってしまった。

「…別れよ

もういいよ、兄貴が好きならちゃんと兄貴のとこ行けばいい。……っていうか俺が限界」

限界だった。

俺の口から出たそれはごく自然で
この選択はきっとこの状況なら誰もが思う当たり前の事で

だからこの時はっきり別れを切り出せた俺はまだ正常だったはずだ。

それから俺はすぐに家を出て、一人暮らしを始めた。

あれほど必死で本気だった恋。
簡単に諦められないことも引きずるのも重々承知の上、
あと半年もすれば彼女は大学だって卒業するし
徹底的に会わないように彼女を避けて
ゆっくり忘れていけばいい…なんて無理に言い聞かせて過ごした。

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でも俺がどんな思いで離れたかなんか知りもしない彼女は
安易に俺の心を揺さぶる。

『……会いたい』

か弱い震える声が俺の鼓膜を刺激して
頬を伝う涙が俺の視界を揺るがして
俺を包み縋り付く華奢な身体が俺の心を惑わせて

『好き』

その呪文にも似た一言が、俺の心を狂わすんだ。
意図も簡単に俺の単純な脳と心をかっさらっていく。

何度となく一人で流した涙が
そんなのは嘘だから騙されるなそんな奴もうやめておけ
そう言う。

なのに、離れられない。
その華奢な背中に腕を回してしまえばもう終わりだった。

沼に両足が浸かってしまった。

抜け出せなくなってしまった。

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