真夜中のシンデレラ

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別に約束したわけでもない。
行かなくても良かった。

ただ、なんとなく

1人で過ごすよりも、誰かと一緒に過ごす方が
いいかなって思ったから今日もあの場所へ向かう。

真夜中0時。誰ともすれ違うことのない交差点に1人。

白い息を吐き出して静まり返った街を見つめる。
自分以外誰もいない空間。そこに近づく人影に気づいた。

(あ、きた)

思わず口元が緩んでしまう。

亜「Aちゃーん！」

静寂をかき消すようにとびきり明るい声と笑顔を
わたしに向けて駆け寄ってくる。

「亜嵐くんお疲れ様」

亜「ありがとう。今日も寒いよねー」

はいっと私に缶コーヒーを渡してくる。
その優しさと缶コーヒーの暖かにほっとした。

「あったかい…」

私が呟くと亜嵐くんが満足げに笑った。
買ってきてよかったーって言いながら自分も
缶コーヒーを頬に当てて生き返るねって笑った。

その笑顔が眩しくて目を細めてふふっと笑みがこぼれた。

亜嵐くんがなになに？って顔をのぞいてきたけど、
首を横に振ってなんでもないと答えると、
亜嵐くんが不満げに私の手を引いて、

亜「寒いからあったかいとこいこっか」

「う、うん」

不意につながれた手にドキドキした。
それと同時にどこか懐かしい気持ちになった。

ああ、そうか。この気持ち…

私の前を歩く亜嵐くんに
数ヶ月前別れた彼氏の背中を思い出してしまった。

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