独占欲のような ページ10
呼びかけると、そう言って一はつばさを睨みつけた。まるで害虫でも見るような嫌そうな顔で、Aのシュシュを奪い返した。
「もう！うるさい！うざい！気色悪い！いいから早く帰ってよ、クソ兄貴！」
「我が妹ながら口が悪い…」
「誰のせいだよ‼悠花さんに連絡するよ⁉」
フードを勢いよく外して、Aはシュシュを奪って一の肩を押す。身重の悠花に連絡するのは気が引けるが、最終手段だ。致し方ないとスマホを取り出すAに一は慌てた。
「分かった！帰るから、悠花には連絡しないでくれ」
仕方なさそうに立ち上がって、一はつばさを視線で人1人殺せそうな眼光で睨みつけた。
「Aに手出したら承知しねぇからな」
「うるさい！ほっといてよ、クソ兄貴‼」
叩いて、去るのを見届けてからAはへたりと机に突っ伏した。タイミングよく、注文したものが届いた。
「Aちゃん、大変だね」
顔見知りの従業員に声をかけられて、Aは視線だけを向けた。
「本当ですよ、もう。迷惑かけてませんか？」
「仕事中は全然、いい上司なんだけどね」
一礼して去って行った従業員。Aは好物のミルクティーを一口飲んで、顔を綻ばせた。
「崎山さん、すみません。うちのクソ兄貴が迷惑かけた」
「俺、お兄さんに認めてもらえるように頑張るね」
「頑張らなくていいから。めんどくさい」
ため息と共にAは顔を覆った。
「でも、崎山さん。こんな口の悪い女でいいんですか？」
「口が悪いのもかわいい。それだけじゃないけど、Aちゃんを形作るもの全てがかわいい」
「世界で1番？」
話を蒸し返されて、Aはまた頬が赤くなっていくのを自覚した。
「もう！その話はいいよ！」
シュシュをまたつばさに投げつけて、Aは両手で耳を塞いで俯いた。つばさがいる方の、右手を楓に外された。手首を掴まれて、その手を外そうと引っ張ったり押したりしているが、男の楓には敵わずAは静かに暴れていた。
「でも、誰もAちゃんのかわいさには気付かなくていい。Aちゃんのかわいさは俺だけが知っていればいい」
独占欲のようなものを感じさせる言葉。
「こうやって照れているかわいい顔も俺だけが知っていればいい。誰にも奪われたくない」
楓からAの右手を受け取って、つばさはその細い手首にシュシュをつけた。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
