嫌 ページ6
つばさの影から出てきて、Aは2人の幼馴染みを抱きしめた。
「……あ」
「おめでとう、ていうのは違うか。でも、嬉しい。翔子ちゃん、幸せになってね。楓、早く独立しなさい。翔子ちゃんのために」
「分かってるよ」
2人を解放して、Aは2人の背中を叩く。
「楓のバカ。だったらホテル一部屋でいいとか言わないでよ。翔子ちゃんがいるんだから」
「天地がひっくり返っても何かあるなんてあり得ないだろ。相手がAじゃ」
「事実だけどなんか腹立つ。なんだろう。言い方かな？殴っていい？」
「なんでだよ」
「……まあいいや。ねえ、翔子ちゃんは嫌だよね？私と楓が一緒に泊まってるの」
「え、別にいいよ？……ただ崎山さんはいい気しないですよね」
ケロッとそう言って翔子はつばさを振り返る。楓と翔子の手を握っているAの肩を少しだけ引き寄せてつばさは頷いた。
「うん。嫌だな」
後ろに引かれた反動で、2人の手を離してしまったAはつばさを肩越しに見上げた。
彼女の恋人ではないから、言う資格がないのは分かっているけれど。彼女を好きな気持ちが強すぎた。
肩を掴んだ手をAの指に伸ばす。細い手を握って彼女を抱きしめそうになった衝動を堪える。
つばさは悲しげに微笑むばかりだった。つばさの恋は一方通行で、苦しい。
フラれたのに、つばさを掴まえてAは期待させるようなことをする。ここにいて、とかつばさがいい、とかそういう意思表示をされると嬉しいけど悲しくもなるのだ。脈がないのならちゃんと拒否してほしい。告白する前の方がまだ拒否されていた気がしてならない。
つばさの方に体を向けて、握られた手を見る。指と指の間につばさの指が入り込んでいる。大きくて、男らしいゴツゴツとした手がAの手を包み込んでいる。握っているのはつばさだけで、Aの指はぴんと伸びていた。
「この手は？」
首を傾げる。その仕草さえつばさの心を射抜くのだ。
「崎山さん、でしたっけ？これのどこが好きなんです？口悪いし、暴力的だし、男を男だと思ってないんですよ。一体どれだけの想いを蹴散らしてきたか…」
Aは泣き真似をする楓の足を思いっきり踏んだ。本当は殴りたかったけれど、あいにく右手をつばさに取られているので、殴ることはできなかった。同時に翔子が楓の脇腹を叩く。2人からの攻撃に楓は撃沈。
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
