涙の ページ45
Aといられるのが嬉しくて、幸せで、まさか本当に撮られるとは思わなかった。
「Aちゃんのせいじゃないよ」
世間を偽っていたわけではないので、弁解なんてしないし、謝罪もしない。事実をちゃんと述べた上でAを守りたい。つばさを応援してくれるファンに理解してほしいと思っている。虫のいい話ではあるが。
目の前の彼女は小さくてか弱くて、腕の中に抱きしめて守りたくなる。ネットにはAのことを知らない誰かが適当なことを書いて彼女の心を傷つけようとする。そんなのは絶対に許せない。
「Aちゃんのことは俺が必ず守るから」
この役割は誰にも譲らない。Aを守るのはつばさでありたいから。
「いい。私は大丈夫だから」
見上げたつばさの顔。視線が唇に行き着いて、パッと下を向いた。こんな時なのに、キスをされたことを思い出して顔が上げられない。
「私のことは気にしないで。崎山さんは自分のこと考えてくれればいいから」
「そんなことできないよ」
背を向ける彼女の手首を掴む。
「待って。話がしたい。……それもダメ？」
「………分かった」
逡巡の後に頷いたAの手を引いて、廊下に出る。2人きりの空間。しゃがみ込んで、壁に背中を預ける。ここで繋ぎ止めておかないと、もう2度と彼女の心が向かない気がして連れ出したけれど。隣の彼女は俯いていた。
「ごめん。迂闊だったね」
「今回は私のせい。私が海が怖いばかりに、縋っちゃったから」
「でも、近付いたのは俺だよ」
「そうだけど…」
我慢していた涙が頬を伝って、手のひらで拭う。
「もう、外で会わない方がいい。私のこと好きになってくれてありがとう。嬉しかった。でも、もう私のことは諦めて」
次から次へと溢れる涙に説得力はない。拭い続ける手を取って、つばさはいつになく弱々しい声を出した。
「……嫌だよ」
手を握る力が想いの強さを語る。痛いほどに握られるのが嬉しくないわけがない。でも、Aは彼に気持ちがないし、その想いはどうしても受け取れない。
「苦しいのは…今だけだよ。大丈夫、崎山さんならもっといい人に出会えるよ」
「そんなこと言わないで」
顔を上げずに号泣するAの涙の理由を聞けずにつばさは頭を撫でる。
「もうAちゃん以外見れない。Aちゃんが好きなんだよ…。大好きなんだよ…」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
